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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
360/2051

第360話 聖女来日4(4)

「ほら明夜あとちょっとだよ! 何としてでも間に合わなきゃ!」

「こんな機会滅多にないものね! ついでにサインもらえないかしら!?」

「知らないよ!? それダッシュしながら真顔で言うことじゃないよね!?」

 明夜の言葉に律義にツッコミながら陽華は駆けるスピードを上げていく。明夜も書道部だというのに驚異的なスピードで陽華のスピードについていく。この辺りは毎朝遅刻せまいとダッシュしている成果だろう。第3者の視点から見れば、何とも悲しいような成果である。

 だがそんな成果もあり、2人はなんとかギリギリで扇陣高校に到着した。

「なんとか間に合った! で、会場どこだっけ明夜?」

「知らないわよ? だって風音さんが門の前で待っていてくれるって言ってたじゃない」

「あ、そうだったね。一応、私たち他校の人間だし平日に学校の敷地内に入るのには色々と許可がいるから、生徒会長の風音さんが案内してくれるって話だったよね。でも、風音さんどこにもいないよ?」

 だが、周囲に風音の姿は見えなかった。というかまだ5時あたりだと言うのに、扇陣高校の正門前にも、ここから見える敷地内にも人1人いない。いったいこれはどういうことなのだろうか。

「おお、やっと来られましたでありますか。お2人とも、また随分とギリギリでありますな」

「新品さん!?」

「ごめんなさいね、どこかの誰かがドカ食いしたせいで予定が狂っちゃったの」

 しかし、敷地内から芝居が現れ陽華と明夜の元までやって来てくれた。その表情は相変わらずの無表情だ。

「ちょっと明夜!? ご、ごめんなさい新品さん。ところで、風音さんはどうしたんですか? 案内してくれるって話だったんだけど・・・・・・」

「会長はギリギリまでお2人を待っていましたのでありますが、時間が厳しくなって来たため先に会場で色々と準備をしているのでありますよ。連華寺風音はウチの生徒会長でありますから、色々と仕事があるんであります。ですが、お2人だけだと会場の場所は分からないので、自分が代わりに派遣されてきたというわけでありますよ」

 テキパキといった感じで芝居が事情を説明した。ついでに芝居はなぜ周囲に生徒たちが全く居ないのかの理由も付け加えて説明してくれた。

 何でも、「聖女がここに来るのはオフレコなので、光導姫と守護者以外の生徒たちは、さっさと帰らせたであります。万が一にも、聖女の姿を見られては厄介なことになるでありますから」という事らしい。なるほど、その配慮は確かに必要だなと2人は思った。

「それより時間がもうハチャメチャにないのであります。案内しますから、お2人とも走ってついて来てください」

「え? あ、はい!」

「任務了解よ」

 そう言って走り出した芝居に、陽華と明夜は芝居の後を追ってまた走り出した。

 今日は走ってばっかりだと2人は思った。

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