第357話 聖女来日4(1)
「――聖女サマが今日学校を訪れる?」
「はい。ちょうど昨日、ファレルナが日本の光導姫と守護者の為の学校を訪問する。そういった連絡が日本政府から来ました」
影人が迷子の聖女を送り届けた次の日。影人はソレイユに呼び出されて神界にいた。最近よくここに来ている気がするが、影人の仕事上それは仕方がない事だ。
「・・・・・・・なんでまた学校なんかを訪問するんだよ?」
ソレイユの言葉を聞いた影人は棒状のお菓子を咥えながら首を傾げた。昨日は何の因果かファレルナと関わってしまったが、本来ならあの少女は国賓。スケジュールはカツカツのはずだ。
それが何故、日本の光導姫と守護者が多く在籍しているとはいえ、ただの学校を訪れるのか。影人にはその理由が分からなかった。
「何でも日本の光導姫と守護者のモチベーションを上げる為、だそうです。ファレルナは光導姫ランキングの1位、実際に1位である彼女を招く事で、光導姫と守護者の精神面を向上させたいと学校側から懇願したらしいですよ」
「ふーん。なるほどな・・・・・・・・・分からん話ではないが、意味あるのかそれ? 光導姫や守護者になってる奴なんか元々超がつくお人好しどもだろ? そういった奴らに限って、モチベーションが下がる事なんて無いと思うがね」
ピコピコと口に咥えた棒状のお菓子を縦に揺らしながら、影人はそんなことを思った。
光導姫や守護者は、言わずもがな命の危険がある仕事だ。だからなる者はそれ相応の覚悟をして光導姫や守護者になるはずだ。そんな人物たちのモチベーションが低下することはないと影人は思うのだが。
「そうですね。だから今回のファレルナに関することは、その彼・彼女たちの高いモチベーションを更に上げる事を狙ったものでしょう。あと少しだけ勘違いをしているようですが、光導姫・守護者の全員がお人好しという理由からそれらになったわけでは決してありません。中には対価を求めて光導姫や守護者になる者もいます」
「対価・・・・・・・・・・・?」
その意外なソレイユの言葉に、影人は疑問の表情を浮かべた。
「ええ。光導姫・守護者になって闇奴や闇人と戦う代わりに、金銭を受け取る者もいれば、自衛のためにと光導姫や守護者の力を欲する者もいます。付け加えておきますが、私は別に彼・彼女らを非難していません。理由が何であれ戦ってくれている者たちに、私とラルバは感謝しています。ただ、光導姫や守護者になる理由は人それぞれという事だと私は言いたいだけです」
そしてソレイユは補足するようにこんな事を付け加えた。金銭を受け取る場合は、国がその金銭を光導姫・守護者本人の口座に振り込む、自衛のためというのは、特別な力を保持していれば、現実世界の自然災害や突発的な狂人の行動に抵抗できる。または、それらのアクシデントから大切な人を守りたいからという者もいる。そうソレイユは説明した。




