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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
356/2051

第356話 聖女来日3(6)

「1つ俺のために祈ってくれよ。明日も健やかに過ごせるようにってさ。聖女サマの祈りなら間違いないだろ」

 フッと口元を緩めて、影人はしゃがみその目線をファレルナに合わせた。影人の願いを聞いたファレルナは満面の笑顔でこう言った。

「はい! それでしたら私にも出来ます。お祈りは毎日していますから。では、今日はお兄さんの明日を願ってお祈りを捧げます!」

「そうか。ありがとうよ、聖女サマ。じゃあ、これでお別れだな」

 影人は感謝の言葉を口にすると立ち上がった。そしてドアを開けて部屋から出ようとすると、後ろからジーノが声を掛けてきた。

「少年、出口まで送っていこう。しかし、君は幸運だな。ファレルナ様に祈ってもらえるなんて」

「ありがとうございます。ええ、そうですね。多分ですが、1番贅沢なお願いじゃないでしょうか」

 影人のファレルナに対する気遣いを理解した上で、ジーノが茶化したようにそんな事を言ってきた。影人もジーノの茶化した言葉を理解した上で、そんな答えを返した。2人ともその口元は緩んでいる。

「あ、あの!」

「ん・・・・・・・?」

 影人がジーノと一緒に部屋を出て行こうとすると、ファレルナのお付きであるスーツ姿のアンナが影人を呼び止めた。アンナはジーノのように日本語は話せないのでその言葉は当然イタリア語だった。

「ア、アリガトウ!」

 片言ではあったが、アンナはそう言って影人に頭を下げた。短い片言の日本語であったが、影人はその言葉に込めらている気持ちを確かに受け取った。

「いえ、こちらこそ。ありがとう(グラッツェ)

 「ありがとう」と言う言葉に「ありがとう」と言葉を返すのも変な話ではあるが、影人は自分の知っているイタリア語でアンナにそう言葉を伝えた。














「ったく、今日はとんだ休日になっちまったな」

 ファレルナを送った会場からの帰り道。自転車に乗りながら影人は1人そんな事を呟いた。

『お疲れ様でした影人。私からもお礼を言います』

「別にいいよ。お前から礼を言われても嬉しくねえ。それよか、もう2度とあの不思議ちゃんには関わりたくないな。疲れるったらありゃしねえ・・・・・・」

 頭の中に突然響いてきたソレイユの声を平然と受け入れながら、影人はそれは疲れたような口調でそう言った。まあ、もう()()()()()()()ファレルナに関わる事はないと思うが、それでも影人はそんな言葉を口に出さずにはいられなかった。

『確かにあなたはそう思ったのでしょうが・・・・・・ファレルナの事をどうか嫌いにはならないでいてあげませんか? あなたには理解し難い所もあるかもしれませんが、彼女は本当にいい子なんです』

「嫌いなんて言ってないだろ。ただ疲れたってだけだ。それに何回か言ったと思うが、俺は別に聖女サマが嫌いな訳じゃない、ただ苦手なだけだ。今日多少関わって、あの子が完全な善人な事は確認できた。だから嫌いにはなってねえよ」

 不安そうなソレイユの声に、影人はいつも通りの砕けた口調で言葉を続けた。関わりたくない=嫌いなのではない。関わりたくない=面倒なだけだ。 

「じゃあ、もう会話切るぜソレイユ。今日は色々と疲れてんだ。詳しい話がしたいってならまた後日でいいだろ」

 肉体的にも精神的にも疲れた影人は、ソレイユにそう言った。今は喋るのも億劫だ。

 そんな影人の状態を理解していたソレイユは、素直に影人の言葉を受け入れた。

『分かりました。では私はこれで失礼します。また何か仕事がある場合に連絡しますね』 

「おうよ、了解だ」

 ソレイユとの念話を打ち切った影人は、自転車のペダルを漕ぐスピードを少しだけ速めた。出来るだけ早く帰って休みたいからだ。

(・・・・・・・・・・帰城影人おれとして、聖女サマに関わる事はもうない。いや、もうないと思いたい。だが、スプリガンとしてはまたあの子に関わるかもしれないな)

 自分のもう1つの顔――スプリガンとしての思考から影人はそんな事を思った。

「・・・・・・・・・・スプリガンとしての俺に会った時、あんたはいったいどんな対応をするのかね?」

 敵対か和平の姿勢か。そこに少しだけ興味を覚えながら、影人は自転車を漕ぎづつけた。

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