第349話 聖女来日2(5)
(というか、この状況的にもし第三者が俺のこと見たら、俺が誘拐犯扱いされねえか? ダメだ、絶対にそんな気がする・・・・・・・・・・・)
影人にとって1番いい方法はファレルナを無視してさっさとこの場から立ち去ることだ。きっとそれが1番いい。面倒ごとはごめんだ。
(・・・・・・・・・・・だが、『聖女』とか関係なくこの子はまだ15の少女。俺より年下だ。そんな子が外国の分からない土地で迷子になってるってのは、精神的にだいぶ不安になってるはず。俺が逆の状況なら、吐く一歩手前まで絶対にいく。・・・・・・・・・・・・ああ、クソ。本当に俺はツイてねえな)
影人はファレルナの事が苦手だ。嫌いではないが苦手。更に迷子の子を助けたら、今度は自分が迷子になったという中々の天然屋だ。善人の天然屋というのは、いよいよもって自分は関わりたくなかった。
しかし、自分が出来る事ならばしてやらなければならないだろう。幸い自分にはスマホがある。
結局のところ、影人はファレルナを見捨てきれなかった。
「・・・・・・・・聖女サマ、あんたはその会場に戻りたいんだよな?」
「はい。あとお兄さん、先ほども言いましたが私の事はルーナと――」
「それは遠慮させてもらう。初対面の人間を愛称で呼べるほど神経が図太くないからな。で、その会場だがちょっと待ってくれ。とりあえず検索かけてみるから」
ファレルナの再びの提言をバッサリと切り捨てながら、影人はウエストポーチからスマホを取り出し、検索エンジンを使って自分が今いる場所を確認する。
「・・・・・・ふむ。この近くの大きな会場って言うとここか?」
影人は地図に引っかかった会場らしき場所の写真をファレルナに見せた。スマホをジッと見つめたファレルナは「はい、ここです」と首を縦に振った。
「そうか。まあ、ここから徒歩15分くらいの場所だ。聖女サマはこっからどうやって戻るか分からんだろう・・・・・・・・・・・・だから、連れて行ってやろうか?」
「いいのですか、お兄さん?」
影人のその言葉を聞いたファレルナは軽く目を開いてそう聞き返してきた。どうやら、案内までしてくれるとは思っていなかったようだ。
「・・・・・・・出会っちまって、しかも迷子なんだろ。なら仕方ない、もう現実を飲み込むさ。あと、別に今日は暇だしな」
ガリガリと頭を掻きながら、影人はぶっきらぼうにそう返答した。そう、仕方ないのだ。もう『聖女』と関わってしまったという現実は変えられない。
「では、お言葉に甘えてもよろしいでしょうか? ありがとうございますお兄さん。実はかなり困っていたんです。ここでお兄さんと出会えた事は、きっと神様の思し召しですね」
(・・・・・・・・・・・もしそうだとしたら、俺はその神様に死ぬほど文句を言いたいがな。つーか、ソレイユだったらアホほど文句言えるんだが、それはないだろうしな)
ファレルナの笑顔を見た影人は内心そんな事を思った。もし、これがファレルナの言うように神の思し召しだとしたら、自分は間違いなくその神にキレるだろう。




