第340話 聖女来日1(2)
「あはは、明夜ちゃんの言う事もわかるわ。私も家の都合上、神聖な雰囲気とか清い空気とかにはよく関わるんだけど、彼女の纏う雰囲気はそれと一緒な感じがするのよね」
明夜の感想を聞いた風音がポニーテールの髪を揺らしながら、明夜の感想に同意した。その顔はどことなく楽しそうだ。
ファレルナが来日した今日は土曜日。だいたい陽華と明夜が風音かアイティレと模擬戦を行なっている日である。だが、今日は色々と特別な日であるという事で模擬戦は中止になった。
代わりと言ってはなんだが、陽華と明夜は風音とアイティレと共に扇陣高校の生徒会室にやって来ていた。風音の持ってきたタブレットを応接用のテーブルの真ん中に置き、4人はニュースの中継映像を見ているといった感じだ。
むろん、その映像を見ているのには理由がある。それはアイティレも言ったように、今日来日した『聖女』、ファレルナ・マリア・ミュルセールが光導姫ランキング1位に位置する少女でもあるからだ。
「家の都合上? 風音さんの家っていったい・・・・・・・?」
「あ、そういえば言ってなかったね。私の家、神社なの。名字は『連華寺』で寺なのに、おかしいでしょ? で、私も小さい時から神社の行事とかには関わって来たから、そういう雰囲気はちょっと分かるかなって感じなの」
不思議そうな顔をしていた陽華に、風音はそう説明を行った。この名字が寺なのに実家が神社という矛盾のようなものは、一応風音の数少ない話題提供の1つでもあるのだが、それはそれだ。
「え、風音さんの家神社何ですか!? よかったらどこか教えてもらっていいですか? 初詣絶対に行きますから!」
「む? という事は元旦は風音さんも実家を手伝う可能性が大。ならば必然風音さんの巫女服姿も見れるのでは・・・・・・・・・よし、カメラ用意しておこう」
「あ、はは・・・・・・それはまた後で教えてあげるけど、明夜ちゃん別に私の巫女服姿は、私が光導姫形態の時に何回も見た事あるよね? 確かに私お正月は巫女服着てるけど・・・・・だから光導姫の時とあんまり変わらないよ?」
なぜかひどく真剣な表情になった明夜に、風音は少し冷や汗を流しながらそう聞いた。なぜ、明夜は自分の巫女服姿を写真に収めたいのか、はっきり言って理解不能だった。
「ふふふっ、それはそれですよ。光導姫の時じゃないプライベートな風音さんの巫女服姿に意味があると私は思います。光導姫として憧れの先輩の1人である風音さんの可愛いらしい姿を撮って、私の部屋に飾ります」
「え、ええ・・・・・・・・・・」
続けられた明夜の言葉に、今度こそ風音は困惑した。分かっていたが、明夜は風音の友人である新品芝居と似たタイプの人物だ。クールな見た目の割にその言動はどこかズレているというか・・・・・・・
「こら明夜! 風音さんが困ってるでしょ! 全く今日はいつも以上にアホっぽさがひどいよ!」
「誰がアホよ!?」
明夜の横に座っていた陽華が少し怒ったような顔でそう割って入った。親友のその言葉に明夜は反射的に大体いつもと似たような言葉を返した。




