第335話 聖女来日 前日(2)
では、イヴが言っている『聖女』の意味とは何か。それは昨日ソレイユから聞いたある情報に基づいている。
(この聖女って呼ばれてる少女が、光導姫ランキング1位、つまり世界最強の光導姫『聖女』ってわけだ)
そう。影人が昨日ソレイユから聞いた情報というのは、全世界で『聖女』と知られているこの少女が、光導姫ランキング1位『聖女』その人であるというものだった。
「・・・・・・ったく、何でか面倒な事になりそうな予感がするのは気のせいかね」
『さあな。だが、俺はお前と違って愉快な予感がするぜ。お前の面倒な予感は、大概俺にとっては愉快なもんだからな』
「・・・・・・・・・・何回か思ってるが、お前本当に性格悪いよな」
イヴに呆れたような呟きを返しながら、影人は昨日のことを思い出していた。
「影人。明後日には日本に『聖女』と呼ばれる少女が来日しますね?」
「確かにニュースではそう言ってたが・・・・・・・・・何でお前がそれを知ってるんだ?」
目の前のソレイユの真剣な表情から放たれた問いかけに戸惑いながら、影人はそう言葉を返した。
いつも通り、という表現は影人にとっては少し癪だが、影人は神界のソレイユのプライベート空間に呼び出されていた。学校の帰りに呼び出されたので、今の影人は制服姿だ。
「影人、まずは1つ聞かせてください。――あなたは『聖女』のファンですか?」
「はぁ・・・・・・・・・・・・?」
そのソレイユの質問に影人は反射的にそう声を出してしまっていた。
「ファン? 俺が『聖女』の? いや、というか質問の意味が理解不能なんだが?」
今度は逆に影人がソレイユに問いかけの形を取った。急に呼び出されて、お前は今度来日する『聖女』のファンかと女神に真剣に聞かれているのである。はっきり言って意味不明だ。影人でなくても同じような質問をソレイユにするだろう。
「理由は後で分かります。とりあえず今は答えてください」
「ああ? ったく、何だってんだよ・・・・・・」
だが、ソレイユがすぐさまその理由を影人に教える事はなかった。影人はガリガリと頭を掻きながら、ソレイユの言ったようにとりあえず答えを返した。
「・・・・・・・・・別にファンでもなんでもねえよ。つーかどっちかっていうと、俺はあの子はあんまり好きじゃない。ぶっちゃけると苦手に入る部類だ」
自分より年下の存在である為、影人は『聖女』の事を「あの子」と呼びながら、ソレイユに『聖女』に関する己の所感を述べた。
「そ、それはまた意外ですね。あの子の事が苦手な人間もいたんですか・・・・・・・その理由も伺っても?」
影人の所感がよほど意外だったのか、ソレイユはその目をパッチリと見開いた。




