第324話 迫る会議、神々の会合(2)
「・・・・・・とにかく、今日の修練はこれで終了だ。お前たちの気持ちは分からなくもないが、1つ忠告しておく。もしその状態のままで戦場に立てば、何の比喩でもなく・・・・・・・・死ぬぞ」
沈黙している2人にそう言い残して、アイティレは『メタモルボックス』を解除した。そして自身も変身を解除して足早に体育館を去っていった。
「・・・・・・アイティレさんの言う通りだね明夜」
「そうね。・・・・・・・・全くもって正論だわ。いっそ残酷なまでに」
変身を解除した2人はしばし体育館の中央にただずんでいた。
「模擬戦は終わったぞ、風音」
「ありがとうアイティレ。あれ、でもかなり早くないかしら? あなたたちが第3体育館に行ってまだ20分くらいしか経っていないけど」
生徒会室の扉を開けて入室してきたアイティレに、生徒会長の席に座っていた風音はキョトンとしたような顔でそう聞いた。
風音の問いかけに、応接用のソファーに腰掛けたアイティレはため息を吐きながら返答した。
「ああ、これ以上はやっても無駄だと判断した。やはりと言うべきか、スプリガンの敵対宣言が効いているようだ。修練に身が入っていない」
「っ・・・・・・・そう、やっぱりそうなってしまったのね」
アイティレの答えを聞いた風音は沈痛な表情を浮かべた。無理もない、風音は陽華と明夜がスプリガンの事を信じていた事を知っている。2人は信じていた人からああ言われたのだ。きっと辛いだろう。アイティレとの修練に身が入らないのも分からなくはない。
「・・・・・・・・・・・・私は不器用だからな、落ち込んでいる2人に優しい言葉は掛けてやれなかった。私に出来たのは忠告くらいだ」
「それも必要な言葉よ、アイティレ。あなたの2人を心配する気持ちはきっとあの子たちに伝わってる。今の私たちに出来ることは、ただ寄り添う事だけ。結局の所、立ち直って前を向くのは本人にしか出来ないから」
数日前に影人が光司に言ったような事を、奇しくも風音は呟いた。別に偶然というわけでもない。ただ、それしか方法はないというだけだ。
「・・・・・・・そうだな、現実とはかくも厳しい。だが、それでも立ち上がる強さがあの2人にはあると、私は信じている」
「うん、そうね。時間は少し掛かるかもしれないけど、2人はまた前を向いてくれるわ。私も信じてる」
風音もアイティレも、陽華と明夜との付き合いはつい最近からだ。だが、彼女たちの心の強さは知っているつもりだ。あの2人は風音との模擬戦でも、アイティレとの模擬戦でも決して弱音は吐かなかった。何度倒されても向かってくる気骨があった。




