第322話 夏の到来、しばしの日常3(6)
「――とても楽しかったわ。改めてありがとう影人。私に付き合ってくれて」
「別に気にしなくて大丈夫だぜ? 年下の遊び相手と話し相手になるのは、ちょっとばかりの年上でも義務みたいなもんだしな」
日が沈もうとしている中、公園から帰路についていたシェルディアと影人は和やかな雰囲気で話し合っていた。シェルディアの強い要望もあり、影人は再びシェルディアと手を繋いでいた。プラモデルは行きと同様に右手に持っている。
「ふふっ、年下ね。確かにあなたの言う通り、年下の遊び相手と話し相手になるのは年上の義務だものね」
影人の言葉を聞いたシェルディアはどこかおかしそうに笑いながら、意味ありげに影人の言葉を復唱してきた。自分は何かおかしな事を言っただろうかと、影人は内心首を傾げた。
(・・・・・・・・・・にしても、今日は終始和やかな日だったな。そりゃあ、先生に夏休みの手伝い言われり、香乃宮とエンカウントした時とかは色々とドギマギしたもんだが、結論から言うと平和な1日だった)
シェルディアと手を繋ぎながら、影人は今日の出来事を思い出していた。まだ1日は終わっていないし、夜にスプリガンとしての仕事が来ないとも限らないが、それでも影人は今日という日をそう結論づけていた。少し前に最上位闇人たちとドンパチしたばかりなので、日常というものがいつも以上に意識に染みる。
(できりゃあこんな日が続けばいいが、それも無理だろうしな。・・・・・まあ、また明日から適当に頑張るさ)
どこかそんな願望を抱いた影人だったが、即座にそれが叶わない事であると再認識する。自分がスプリガンである限り、当分その願いが叶うことはない。
それでも明日は続いていく。ならば明日からまた頑張ろう。影人は自分にそう言い聞かせると、シェルディアにこんな提案をした。
「そうだ、嬢ちゃん今日ウチに夜飯食いに来るか? もちろんキルベリアさんも一緒に。なんだかんだ母さん賑やかな事が好きだから即オッケー出すと思うぜ」
「本当? ならお言葉に甘えようかしら。ねえ、影人。今日のメニューは何なの?」
「何だったかな。・・・・・・・・ああ、そうだ。確か――」
自分の隣人である少女とそんな何気ない会話を交わしながら、影なる少年のとある1日は過ぎていった。




