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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
307/2051

第307話 夏の到来、しばしの日常1(1)

「・・・・・・・あと1ヶ月もしないうちに夏休みか。まあ、今年の夏休みは休めるか怪しいもんだがな」

 いつも通り癖である独り言をボソボソと呟きながら、影人は学校へと向かっていた。季節はもう7月に入った頃。ここからが本格的な夏の始まりだ。

(なんせ今年はスプリガンの仕事があるからな・・・・・・・例年通りのだらけにだらけまくった夏休みは無理そうだ)

 軽くため息を吐きながら、影人はガリガリと頭を掻いた。影人の夏休みの過ごし方は基本的には1人で家に引きこもり、気分が向いたら周囲を散歩するといった感じだ。影人は友達が極端に少ないことと1人でいる事が好きなため、まるで世捨て人のような夏休みを今まで送ってきていた。

「――や、やあ影人! 君、相変わらず雰囲気は暗い奴だね!」

「・・・・・・・・・・朝っぱらからそうそう俺をディスってんのか暁理?」

 後方から聞こえた声にそう答えながら、影人は後ろを振り向いた。ボブほどの髪の長さに影人と同じ制服にズボン。一見すると男子のようだが、彼いや彼女は女性である。そこにいたのは影人の数少ない友人、早川暁理であった。

「つーかなにキョドってんだよ。お前、前に映画観に行った時からちょっとおかしくねえか?」

「べ、べべべべ別に!? 僕はいつも通りの僕だぜ!? そんな事はないないなーい!」

「・・・・・・・・・・医者紹介してやろうか?」

「君って奴は!! 普通そんなこと乙女に言うかな!? あまりの安定の影人っぷりに僕ももう普通に怒っちゃってるし!?」

「・・・・・すまんがお前の言っている事の意味がわからん」

 ついに自分の友人はイカれたのかと影人は本気で危惧したが、「はあー・・・・・・君に色々と期待した僕がバカだったよ。もう普通でいいや」といつもの暁理に戻ったので、イカれてはなさそうだ。

「そういえば聞いたかい影人? 朝宮さんと月下さんまたなんか落ち込んでるみたいなんだってさ。しかも今回は前回みたいに分かりやすくじゃなくて、無理矢理明るく振る舞ってる感じらしいよ。今度はいったいどうしたんだろうね」

 暁理と共に学校に向かう流れになり、再び歩き始めると暁理がそんな話題を振ってきた。

「・・・・・・・・・・さあな。てか何でわざわざあの名物コンビの話題を俺に振ってくるんだよ」

 暁理の話題に一瞬ギクリとする影人。なぜならば2人がまた落ち込んでいる理由に心当たりが大有りだからである。

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