第305話 もう1人の正体不明(4)
「『提督』はスプリガンを敵と断定し確定しました。『巫女』は色々と悩んでいる感じでした。・・・・・・・そして、陽華と明夜は非常に落ち込んだような顔をしていました」
「・・・・・・結局、お前は何が言いたいんだ」
なぜか悲しげな表情になりながら、光導姫たちの反応を自分に教えてくるソレイユに影人はズバリとそう聞いた。影人のその言葉にソレイユは「っ!」と一瞬息を呑み、感情的になりながら言葉を続けた。
「なぜ、なぜわざわざあんな言葉を言ったんですか!? あんな言葉はあなたが光導姫や守護者の敵であると自分から宣言したようなものでしょう!? 全てを敵に回しながら、あなたを信じているあの2人の気持ちを踏みにじって、そんなのじゃあなたが・・・・・・・・!」
気がつけばソレイユは涙を流していた。そこにいたのは光の女神ではなく、ただの泣きじゃくる女であった。威厳も何もかも、今のソレイユにはないだろう。
「・・・・・・とりあえず落ち着けよ。なんだかんだ優しいお前の事だ。お前の言いたい事は何となくわかる。だから、落ち着け」
涙を流すソレイユに影人は極めて落ち着いたような口調で諭すようにそう呟く。ソレイユはその影人の言葉と雰囲気に何とか感情を整理することが出来た。
「・・・・・・・・・・・すみません、少々取り乱しました。やっぱりあなたといると、私はいつもより少し感情的になるようですね」
「自覚はあったのかよ・・・・・・・・なあ、ソレイユ。やっぱお前は女神だよ、こんな俺なんかのために泣いてくれたんだからな」
影人は珍しく柔らかな笑みを浮かべて上を見上げた。神界のソレイユのプライベート空間の天井とでもいうべき部分は、明るい光が瞬いているため確認することが出来ない。そんな光を見ながら、影に徹する少年は言葉を述べる。
「俺の敵対宣言は最上位の光導姫と守護者に伝わった。そっからどうやって伝播するかまでは分からないが、これで明確に俺を敵だと大方の光導姫と守護者は思っただろうぜ。闇サイドは元から俺を敵と断定してるから、俺は両陣営のただ1人の敵対者になったってわけだ」
影人はそこで一息つくと、再び言葉を続けた。
「ついでに、唯一スプリガンを信じていた朝宮と月下の思いも俺は真正面から踏みにじった。そんな俺をお前は哀れに・・・・・いや悲しいって思ってくれたんだろ? ・・・・・・・・・・俺がそうした理由をお前には分かったから」
「っ・・・・・・・・・・・はい」
影人の言葉にソレイユは静かに頷いた。そうだ、ソレイユには分かっていた。影人がなぜわざわざあんな宣言を行なったのか。それは全てスプリガンとしての仕事のためだ。




