第304話 もう1人の正体不明(3)
「――はい、第何回かは忘れましたが作戦・報告会のお時間です。そこっ! 意味不明だと言わんばかりの態度を改めなさい!」
「いきなり何だよ・・・・・・・・」
なぜかソレイユに指差されながら、影人はため息をついた。昨日の戦いの事で影人は神界に呼び出されたのだが、影人が来るなりソレイユはなぜか怒ったようなテンションでそう言ってきたのだ。
「いいですか影人、私は珍しく怒っています。なぜだか分かりますか?」
「・・・・・さあな、皆目見当もつかねえよ。昨日の戦いで俺は何かミスったか?」
プリプリと怒るといった表現がピッタリな女神をその長すぎる前髪の下から見つめながら、影人は首を傾げた。昨日のアクシデントだらけの戦いは、自分にしてはよくやったと思うのだが、果たして一体どんなミスをしただろうか。
「いいえ、はっきり言って昨日のあなたの仕事は完璧でした。あの状況で光導姫も守護者も死なせないのは流石の一言です」
「じゃあ、お前はいったい何に怒ってるんだよ?」
ソレイユの自分への評価に何か恥ずかしいような気持ちを抱きながら、影人はそう質問した。自分の仕事が完璧であったならば、本格的にソレイユが何について怒っているのか影人には分からなかった。
「・・・・・・・・・私が怒っている理由、それはあなたの光導姫と守護者に対する敵対宣言とでも言うべき言葉です」
「・・・・・・・・・・・・・そのことか」
自分を真っ直ぐに見つめるソレイユの怒りの理由に、影人はようやく納得がいった。
「はい、そのことです。・・・・昨日、『提督』や『巫女』、陽華や明夜を1度ここへと転移させました。おそらく『侍』と10位の彼も、1度ラルバの元へと召喚されたことでしょう。理由はあなたが出現したから、というのが表向きの理由です」
「そうだな。お前と俺が繋がっている事は誰にも知られちゃならない。だからお前は、スプリガンを謎の人物として対処しなくちゃならないもんな」
普通の人間ならば少し説明不足に感じるかもしれないソレイユの言葉の意味を、だが影人は理解していた。表向きソレイユの立場としては、スプリガンが現れたのならば遭遇した光導姫からスプリガンの情報を収集しなければならない。なぜならば、ソレイユも本来はスプリガンは謎の怪人だとしか知らないはずだから。そのための行動が、光導姫たちからの事情聴取だ。
「・・・・・・・・私が彼女たちをここに転移させた本当の理由は、彼女たちの反応を見るためです。あなたのあの宣言を受けた彼女たちの反応は様々でしたよ」
「・・・・・・・・」
ソレイユはいつも通り昨日の戦いを自分か他の光導姫たちの誰かの視界と聴覚を共有して観察していたのだろう。ゆえに影人のあの言葉も聞いていたというわけだ。




