第300話 裏の策謀、その結果(4)
「・・・・・・・・お前の啖呵はしかと我が受け取った。お前たちが奴に勝つことを願おう。では、これで解散と――」
レイゼロールが冥、クラウン、殺花に向かってそう言おうとしたとき、レイゼロールと3人との間の空間に突如として濃い闇の渦のようなものが出現した。するとその渦の中から2人の人物が現れた。
「はい、到着っと。ほらキベリア、酔ってないでシャキッとしなさい。全く、あなたの体は本当に貧弱ね」
「うぷっ・・・・・・・・む、無茶言わないでくださいよシェルディア様。私酔いやすい体質だから、転移でも酔うんですよ。つまり転移酔いです。というか、そもそもこの体はほぼ人間と変わらないわけで、それはつまりモヤシ時代の私の体という――」
「どうでもいいわ、そんなこと。ああ、久しぶりねあなたたち。さっきは見てただけだったから話すのはなんだか新鮮かもしれないわ」
現れたのはシェルディアとキベリアだった。シェルディアは気分が悪そうにしているキベリアとの会話を切上げると、驚いたような表情を浮かべている3人の闇人に向かってそう語りかけた。
「シェ、シェルディアの姉御・・・・・・・」
「お、お久しぶりですシェルディア様。しかし、その言葉の意味はいったいどういう・・・・・・・・」
「・・・・・・・・いやー、さすがはシェルディア様。ワタクシなどより遥かに神出鬼没でいらっしゃる。ワタクシも見習わなくては・・・・・・・」
シェルディアを久しぶりに見た3人の闇人たちはそれぞれの反応を示した。
「あ、殺花! よかった〜! 私、殺花が浄化されるんじゃないかってヒヤヒヤしてたんだから!」
「キ、キベリア殿? な、なぜその事を・・・・・・?」
そして、殺花の姿を見たキベリアは驚き戸惑っている殺花に抱きついた。殺花とキベリアは十闇の中でもかなり仲の良い部類に入る。ゆえに殺花も戸惑ってはいるものの、キベリアの抱擁を嫌がりはしなかった。
「・・・・・・・・・なるほどな。シェルディア、貴様キベリアと共に見ていたな?」
「ええ、おかげでスプリガンを見る事が出来たわ。残念ながら、接触は出来なかったけどね」
キベリアの言動からシェルディアたちも戦場にいた事を察したレイゼロールは、シェルディアにそう言った。シェルディアの突然の登場に、レイゼロールだけは別段驚いてはいなかった。シェルディアと付き合いの長いレイゼロールは、シェルディアはそういうものだと半ば理解を諦めていた。
「え、姉御とキベリアもいたのかよ!? 俺全く気がつかなかったぜ・・・・・・」
「ふふっ、それは仕方ないわよ冥。あなたは戦いに集中していたし、私たちの存在はあなたたちには認識出来ないようにしてたから」
冥の反応を見たシェルディアは、笑みを浮かべながらそう言った。その話を冥の横で聞いていたクラウンは、「それはそれは・・・・・・・・・・いつかワタクシもそんな業を身につけたいものですね」と尊敬するような眼差しをシェルディアに向けていた。ちなみに、殺花はまだキベリアに抱きつかれていてそれどころではなかった。「キ、キベリア殿。そろそろ離れてもらってもよろしいか・・・・・?」「もうちょっと! もうちょっとだけだから!」といった具合に、珍しく殺花は困ったような表情を浮かべていた。




