第30話 友と謎の光導姫?(2)
「ぐっ・・・・・・!?」
陽華と明夜と別れた光司は、人が少ない校舎の陰に移動した。この場所は昼休みでも人が通ることは滅多にない場所だ。
「やっぱり・・・・・・きついな・・・・!」
腹部付近を抑え光司はうめき声を上げる。実はフェリートとの戦いで光司は肋骨の1本にひびが入っていた。いくら守護者時の肉体が頑丈でも、最上位の闇人の一撃をモロに喰らったのだ。それくらいのダメージは受けるものである。
現に今もコルセットを巻いているが、呼吸をする度に痛みが響く。しかし、この程度で学校を休むわけにはいかない。
ただでさえ昨日は休んでしまったのだ。これ以上自分が休めば、陽華と明夜はきっと心配するだろう。あの2人は優しいから。
「守護者の僕が、これ以上、彼女たちに心配をかけるわけにはいかない・・・・・!」
光導姫を守る守護者が、光導姫に心配されるなんて守護者失格もいいところだ。それは光司の守護者としてのプライドが許さない。だから、光司は陽華と明夜の前でいつもと変わらないように振る舞ったのだ。
「ははっ・・・・・・・情けないな、俺は」
ポツリと自分の心情を独白しながら、光司はしばらくそこで体を休めた。
その姿を見られているとも知らずに。
光司が陽華と明夜と話しているのを廊下で盗み聞きしていた影人は、光司の様子に多少の違和感を抱き、2人と分かれた光司の後をつけた。そして、校舎の陰に移動した光司の様子を観察していた。
光司のその様子を、男として見てはいけないと思いながらも、見届けてしまった影人はすぐさま踵を返した。
(香乃宮、お前は・・・・・・)
光司の意地を見た影人は、思わず尊敬の念を抱いた。香乃宮光司という男はただの優しいイケメンではない。男としてもまさに漢であった。
普段、人に対して尊敬の念どころか、ほとんど何も思わない影人だが、光司に対しては人として尊敬できると感じた。
「おっと、あまり俺らしくないな・・・・・・」
教室に戻る途中、思わずそう呟いた影人だが、今まさに影人とすれ違った男子生徒は「こいつ大丈夫か?」的な顔をされたことに気がついていない。一体何がお前らしくないのか。男子生徒はどうでもいい疑問を抱えてしまった。非常に可哀想である。
そのまま人が多い昼休みの廊下を進み、影人の所属クラスである2年7組に入ろうとしたところで声が聞こえてきた。
「おーい、影人」
世にも珍しい自分を呼ぶ声である。影人は仕方なく声が聞こえた方向に顔を向けた。まあ、この学校で自分の下の名前を呼ぶ人間は1人しかいないので、振り返らずとも誰だか分かっているが。
影人が振り返ると、そこには隣の2年6組、この学校唯一の友達である、早川暁理が苦笑いで立っていた。




