第299話 裏の策謀、その結果(3)
「・・・・ああ、そういうことか。俺はあいつと戦って負けた。そんで意識を失ってたのか・・・・・・・・」
「冥、大丈夫そうで何よりだが、まずはクラウンに礼を言っておけ。クラウンと殺花からある程度の状況は聞いている。窮地であったお前を助けたのはそこにいるクラウンだ」
状況を理解したであろう冥に、レイゼロールはまずそう話しかけた。レイゼロールの言葉に冥は「マジかよ、謝謝クラウン」と素直に感謝の言葉を述べた。冥の言葉にクラウンは「いえ、困っている時はお互い様ですーから」と柔和な笑顔を浮かべた。
「で、冥よ。お前の先ほどの様子と言葉から察するに、お前はスプリガンに負けたのだな?」
「悔しいがお前の言う通りだ。俺はあいつに負けた。しかも完膚なきまでにな。あんだけ強いと俺が思ったのは、ゼノの兄貴と戦った時以来だな」
レイゼロールの確認の言葉に、冥は珍しく真面目な口調でそう答えた。基本的に粗野な性格寄りである冥だが、冥は武人でもある。素直に自分の弱さを認め、敵の強さを認めるということはとても大事な事なのだ。
「・・・・・・・スプリガンとの戦いは滅茶苦茶ワクワクしたんだ。あんだけ強い奴と戦うのはかなり久しぶりだったからな。だからあいつと戦えてよかった。そこは、その機会を与えてくれたあんたに感謝するぜレイゼロール」
冥は立ち上がると、右手の拳を左手で包んだ。冥の人間時代の母国では、拱手と呼ばれていた仕草だ。この仕草は感謝の意を示す仕草である。
「き、貴様が感謝だと・・・・・・・?」
「これはこれは! 冥さんが真面目に感謝するなんて、明日は剣でも降りますかねー」
「うるせえな、てめえら! 俺のことをなんだと思ってやがる!?」
冥の至極真面目な言葉と態度を目の当たりにした殺花とクラウンは、ありえないものを見るような目で冥を見つめた。そんな2人の言葉に冥は、いつも通りの口調で2人に怒りの言葉を返した。
「ったくよ・・・・・・・・おう、だがよレイゼロール。俺は次は絶対に負けねえ! 俺が負けたのは俺が弱かったからだ! なら次にあいつに、スプリガンとまた会うまでに俺があいつより強くなりゃいい! だから覚えとけよ! あいつに勝つのはこの俺だ!!」
冥がその瞳を爛々と輝かせそう宣言した。その啖呵を聞いた殺花とクラウンは、「やはりいつもの馬鹿と変わらんな」「いやー、やっぱり冥さんって感じですね」と呆れていたり苦笑していたりした。殺花に限っては、自分も先ほど同じようなことをレイゼロールに宣言したので、冥の言葉を馬鹿には出来ないはずだが、そこは自分は自分。他人は他人というやつだ。




