第298話 裏の策謀、その結果(2)
「・・・・・・お前達の反応は嬉しくはあるが、とりあえず今その事は置いておけ。とにかく、我が言いたいのは自分をそんなに卑下するなということだ殺花。今回、お前が我に頼んだことはただの時間稼ぎだ。スプリガンのことは確かにもう1つの目的ではあったが、副次的理由に過ぎん」
レイゼロールが殺花と冥に話したもう1つの目的。それは、スプリガンのことだった。スプリガンは光と闇サイドの戦う戦場に現れる謎の怪人だ。その正体も目的も、出現する理由など全てが謎の怪人ではあるが、もしかしたら最上位闇人2体の出現という特殊な場ならば、スプリガンは現れるかもしれないとレイゼロールは考えていた。
そうしてスプリガンが現れた場合、出来るならばスプリガンを殺してほしい。それが、レイゼロールが冥と殺花に頼んだもう1つの目的の内容だった。
「で、ですが、己は・・・・・・」
「いいか殺花、2度も同じことを言わせるな。お前は我の頼みごと、その主たる目的を果たすために戦ってくれた。それで充分なのだ」
少しばかり力を込めた口調で、レイゼロールはそう断言した。そもそも、副次的目的であったスプリガンは、レイゼロールとフェリートすらも退かせた強敵だ。それに加えて、最上位闇人である殺花が遅れを取るほどの光導姫も戦場にいたならば、レイゼロールの副次的目的は単なる無茶ぶりになってしまう。
そして、それは副次的目的を命令したレイゼロールのミスだ。だが、レイゼロールはその事について殺花に謝罪はしなかった。もしここで自分が謝れば、殺花は更に己を責めるだろうという事が容易に想像できるからだ。
「・・・・・・・・・主のお心遣いと寛容さに、ただひたすらに感謝いたします。今1度、己は自分を鍛え直します。そして次こそは、必ずやスプリガンを討ってみせます・・・・・!」
レイゼロールの言葉に一瞬だけ殺花はその面を上げた。だが再びその頭を地に下げると、殺花は感極まったような声でそう宣言した。すぐに顔を下げ直したのは、不覚にも表情が崩れたからだ。今の殺花の顔はレイゼロールに見せるには、感情的に過ぎる。
「ああ、期待している。・・・・・・・さて、そろそろ冥にも話を聞きたいところだが――」
ほんの少しだけ口角を上げながら、レイゼロールは殺花にそう言った。そしてこれで殺花との話は終わったとばかりに、レイゼロールはその視線を倒れている冥へと向けた。
「・・・・・・・・・う? ・・・・・・・・・・・うおっ!?」
と、レイゼロールが視線を向けた瞬間、タイミングの良いことに冥は上体を起こし意識を取り戻した。次にキョロキョロと周囲を見渡すと、冥は自分の頭に手を当てた。おそらく状況を整理しているのだろう。




