第293話 敵対宣言と気配の正体(2)
「・・・・・・・・お前たちに教えるつもりはない。いま言ったはずだ、俺は誰ともなれ合うつもりはないってな」
「な、なぜなんですか!? あなたの目的しだいでは、対立する必要も――」
影人の拒絶の言葉に風音は驚き、なおも食い下がろうとした。だが、風音の言葉の途中で意外にも刀時が割り込んできた。
「たぶん無駄だよ、風音ちゃん。きっとこいつは絶対にそんなことを俺たちには教えてくれない。だって眼が物語ってるからね。少しでも俺たちと歩み寄ろうっていう気があるなら、こんな冷たい眼は向けてこないはずだから」
「そ、それは・・・・・・・・」
刀時の指摘に風音が言いよどむ。なぜならば、刀時の指摘は最もだと風音は感じたからだ。
「・・・・・・・・ところで、俺は噂の君と今日初めて会うわけだけど、おたくいったいどんな人生歩んできたわけ? いや、見たところ俺らと同じくらい若いし、闇人とも敵対してたから、もしかしたら人間かなーって。で、人間で見た目通りの若さだとしたらさ、いったい、どんな経験すればそんな冷たい眼が出来るのかなって。いや、ちょっとした興味だよ」
言葉通り、影人に興味深そうな視線を向けながら刀時はそんなことを質問してきた。別に影人は演技で冷たい眼というか、態度をしているだけなのだが、どうやらこの守護者の目は節穴のようだ。
「・・・・・・・・知りたがりは命を落とすぞ。その無駄な好奇心を引っ込めることだな」
とりあえず、どこかドヤ顔の節穴守護者を内心哀れに見つつ、影人はそれっぽい言葉を返してやった。スプリガンの雰囲気を保ちつつ、それに見合った言葉しか喋れないというのは、中々に不憫だ。
「おっと、そうかい。そいつは失敬。なら今の質問は忘れてくれ」
ひょいと両腕を上げながら、刀時はクールにそう言った。その態度から、この守護者はこれ以上自分に関わりはしないだろうと影人は思った。どうやら物わかりはいいらしい。
(つーか、あれはまだかよ。もう戦いも終わったし、あの円も消えたんだ。そろそろあれが来てもいい頃だがな)
影人は内心そんな愚痴をこぼす。このままでは、本当にもう一戦ことを構えなければいけないかもしれない。別に戦えなくもないが、はっきり言って影人は疲れていた。出来れば戦うのは面倒なので避けたい。そのためには、きっかけが必要だ。
と、影人がそんなことを思った瞬間に、光導姫や守護者たちが光に包まれ始めた。
「「「「「「!?」」」」」」
(やっとか! よし、この瞬間に乗じて――)
それは光導姫や守護者を別の場所へと移動させる転移の光。影人はこの瞬間をキッカケにするべく、その場で跳躍した。




