第29話 友と謎の光導姫?(1)
「やあ、2人とも心配をかけたね」
フェリートの襲撃から2日経った昼休み。廊下で陽華と明夜に出会い、2人から腹部付近の負傷の心配をされた光司は、爽やかな笑顔を浮かべながら、そう答えた。
「香乃宮くん! よかった、でも本当に大丈夫だったの?」
「そうね、かなりの重傷みたいだったけど・・・・・」
陽華がホッと胸をなで下ろし、明夜が未だに心配そうに光司を見つめる。だが、パッと見て今の光司は健康そのものに見える。
「幸いなことに強烈な打撲で済んだよ。守護者時の僕の肉体は頑強だからね。いや、本当に情けない姿を見せてしまった。心から謝罪するよ」
そう言って光司は頭を下げた。学校の有名人が名物コンビに頭を下げている姿に、廊下を行き交う生徒たちは何事かと好奇と訝しげな視線を送る。
「こ、香乃宮くん!? いきなりどうしたの!?」
「と、とりあえず頭を上げて!?」
突然、光司が頭を下げだしたので陽華と明夜は慌てた。そもそも、2人にはなぜいきなり光司が頭を下げたのか全くわからない。
「ああ、すまない。ここでは迷惑だったね、でも僕は君たちを守る守護者なのに、結果的に君たちを危険な目に遭わせ、僕はあの様だ。・・・・・本当に不甲斐ない、自分が嫌になるよ」
いつもは明るい香乃宮光司が沈んだ顔で、自らの謝罪のわけを語った。どうやら光司は一昨日のフェリートとの戦いのことについて陽華と明夜に謝ったようだ。
「香乃宮くんは必死にやってくれたよ! それを言うなら私たちだって――!」
「香乃宮くん、そんなに自分を卑下しないで。あなたは何度も私たちを助けてくれた。不甲斐ないのは私たちの方よ、一昨日だってあなたがいてくれなかったら――」
2人は光司の言い分を否定した。光司は新人の光導姫である自分たちを助け守ってくれた。フェリートが襲来したときも光司は、囮を買って自分たちを逃がそうとしてくれた。何があっても陽華と明夜を守ろうとしてくれた光司が不甲斐ないはずがない。
「いや、一昨日君を助けたのは僕じゃない。あのスプリガンとかいう男さ」
明夜の言葉の途中に光司はそう口を挟んだ。その顔はどこか不信感や疑念といった感情が滲んでいた。
その言葉で陽華は、光司がなぜスプリガンを信用できないと言ったのか、その理由を聞きたいと思った。しかし、陽華がそのことを聞こうとしたが、明夜が言葉を挟んだ。
「それは――!」
明夜が何か言いたげな表情で光司を見る。しかし、光司は首を横に振った。
「それが事実だよ。――と、すまない。少し用事があってね、僕はこれで失礼させてもらうよ。じゃあ、また」
光司はそう言って微笑むと、そのまま廊下を進み階段へと姿を消した。
後に残された2人は心配そうにお互いに顔を見合わせた。




