第288話 勝者は(3)
『くくっ、まあ大体は合ってる評価だな』
(おい、イヴ。俺はちょっとばかし特殊な仕事をやらされてるが、ただの人間だ。てめえらの評価は的外れもいいとこだぜ)
『さあ、どうだかな』
イヴはそう言い残すと、それ以降は何も言いはしなかった。後で覚えとけよ、と影人は思ったが、現実では先ほどの影人の言葉に反応したクラウンが「ご明察!」と拍手をしてきた。
「観察眼も素晴らしいですー。あなた様の言うとおり、ワタクシめの仕事は、殺花さんと冥さんの救援でして。まあ、このような場合はお2人を回収して撤退、ということになりますが」
「・・・・・・逃がすと思うか? そこの闇人は逃したが、冥は意識を失っている。このチャンスを逃すほど私達は甘くない」
アイティレが割り込むように、クラウンを睨め付けた。殺花を浄化できる絶好のチャンスは非常に残念ながら逃してしまったが、まだ意識を失っている冥がいる。冥が意識を失っている今ならば容易に浄化は可能だ。
「――ええ、そうね。私達はこのチャンスは逃さない。最上位の闇人が視界内で意識を失っている、きっとこんな機会は100年に1回とないわ」
「だね、俺らサイドからしてみれば激アツな展開だ。ま、戦ったの俺たちじゃないけどね」
複数人の足音とそんな声と共に現れたのは、影人の生み出した闇のモノたちと戦っていた風音や刀時たちだった。影人が召喚を中止したため、残っていた闇のモノたちを全て倒し終えて、アイティレに合流してきたのだろう。
「スプリガン・・・・・・・・」
「お久しぶりね、スプリガン。この前はどうも」
「・・・・・・・・・・」
そしてその中には当然、陽華、明夜、光司もいた。相変わらず明夜はどこか空気を読めていないようで、影人に気さくに話しかけて来たが影人は無視を決め込んだ。
「無視はひどくないかしら? 私達あなたが召喚した奴らとえげつないほど戦わされたんだけど。無視していいのは虫だけって――」
「わー!? 明夜それ以上はダメ! さすがに空気読んで!」
陽華が慌てたように明夜の口を塞いだ。さすがに、この場面でのオヤジギャグは空気がえげつないことになる。「むぐっ!?」と明夜は口を押さえられジタバタとしていた。
「うん、あなたいいですねー。ここでユーモアのある言葉を言おうとしたのは、とてもエンターテイナーに向いていると思いますよ。何よりもまず、その心が素晴らしい」
パチパチとなぜか明夜に向かって拍手を送りながら、クラウンは微笑んだ。クラウンの言葉を聞いた明夜は、もう陽華が手をどけていたこともあり「あ、ありがとう・・・・・・・?」と反射的に言葉を返していた。さすがの明夜も、これには疑問形である。




