第287話 勝者は(2)
「いやー、まさに間一髪でしたねー。ですが、この間一髪というものも奇術の醍醐味。どうでしょう、お楽しみ頂けましたか? お客様」
「っ、何者だッ!」
声がした方向を振り返り、アイティレは銃を構えた。声がした方向はアイティレから右斜め前方。するとそこには、奇妙な出で立ちの男と消えた殺花が存在していた。
「はい、お客様とは初めてお会いいたしますねー。ワタクシめはクラウンと申す者。一応、十闇の末席を務めさせて頂いている者でもありますが、見ての通りと名の通り、ただのしがない道化師でございます」
ピエロ風のペイントを顔に施し、亜麻色の髪を揺らすクラウンと名乗った男は、恭しい感じでアイティレに向かってお辞儀をしてみせた。
「・・・・・・・・・貴様、闇人か。それもその女と同じ最上位クラスの」
アイティレはクラウンと初めて会う形だったが、その言動と雰囲気からクラウンが殺花と同じく最上位クラスの闇人であることは予想できた。
「あはは、まあそうではありますがー。いやはや、申し訳ありませんお客様。本日のワタクシは楽しくお喋り出来ない身でして。何せ、あそこで伸びている冥さんも回収しなくてはなりませんから」
そう言って、クラウンは大きく地面がへこんでいる中心地に目を向けた。そこには意識を一時的に破壊され意識を失っている冥が仰向けに倒れ込んでいた。
(先ほどの凄まじい衝撃音と下の円模様が消えた事で、大体何が起きたかは察していたが・・・・・・・・・・スプリガンめ、やはり奴の強さは私達の脅威になるか)
並行的に行われていた冥とスプリガンの戦いに決着がついていたことは、アイティレにも分かっていた。何せ、凄まじい衝撃音がこの戦場全体に響き渡ったのだ。殺花との戦闘に集中していたアイティレにもその音は聞こえていた。
「・・・・・・・・何だお前は」
そして空中から冥の横へと着陸していた影人は、新たなる人物の登場にその眉根を寄せた。冥をぶっ倒して真場が消えていることを確認していたら、道化師のような男が戦場に増えていた。はっきり言って、中々理解が及ばない。
「あなた様にもお初にお目にかかりますー、スプリガン様。ワタクシはクラウンと言う者です。あなたのお噂はかねがね。フェリートさんにレイゼロール様、それに冥さんにまで勝利したあなた様の強さは・・・・・・・・・闇人である私から見ても化け物、と評せざるを得ないですね」
「・・・・・・・お前は闇人か。見たところ、お仲間の闇人の救援にでもしにきたってところか」
クラウンと名乗ったその男は、ほんの少し真剣な目つきで影人を見つめてきた。クラウンの言葉から闇人ということは分かったので、クラウンの目的を状況から影人は察した。
あと、誰が化け物か。自分はまだ人間である。人間を辞めた奴にそんなことを言われる筋合いはない。




