第285話 終撃の一撃(6)
「ちっ・・・・・・・!」
地面が急激に凍っていく。『氷の地』を回避するためには、地面から離れるしかない。ゆえに殺花は仕方なく跳躍を余儀なくされた。
「そう、お前はそうするしかない。そして空中では否応にも動きが制限される」
アイティレは高く跳躍した殺花を見つめ、左の拳銃を殺花へと向ける。もう1つの右の拳銃は天へと掲げた。
(くっ、あの氷の雨が来る・・・・・・・・!)
高く跳躍してしまったので、地面へと戻るには最低でもあと2秒はかかる。その間にあの氷の雨が降り注げば、殺花は多大なダメージを負うことは確定だ。それは避けなければならない。
(もう残りの力はかなり少ないため使いたくは無かったが、仕方ない)
「影縫――!」
地面に残っている殺花の影が伸び、宙にいる殺花の足に絡みついた。影は殺花の足に絡みつくと、そのまま地面へと殺花の体を引っ張った。
(これならば氷の雨への対応は可能だ・・・・・・・!)
残りの1秒で殺花の足が地面へと着く。そうすれば殺花は氷の雨の範囲外へと逃げることが出来る。
「ふむ、そう来るか。なら、これでいいな」
アイティレはニヤリと笑みを浮かべると、右手を下ろし、左の拳銃を再び地面へと向けた。
(まさか・・・・・!?)
アイティレの右の拳銃を天に掲げる動作はフェイントだったのだ。殺花がその事に気がついた時にはもう遅かった。殺花が1度凍った地面に着地した瞬間に、また『氷の地』は発動した。
「ぐっ・・・・・・・・!」
凍った地面を更に氷が覆う。殺花はタイミング的にそれを避ける事が出来ず、両足を再び凍らされた。
(まだだ・・・・・・・・!)
殺花は右手のナイフで先ほどと同じように氷を砕こうとしたが、アイティレがそうはさせなかった。
「そこだ」
「!?」
なぜなら殺花の右手のナイフをアイティレが右手の拳銃で弾いたからだ。
「貴様が焦ってくれたおかげで、ようやく武器を弾けた。礼を言うぞ」
「どこまでも癪に触る・・・・・・・・!」
さらりと神業を披露したアイティレ。そんなアイティレが放った言葉に殺花は苛立ちの言葉を上げた。
「ふん、褒め言葉だな。ちなみにもう2つお前が苛立つ事実を教えてやろう。1つは、先ほどお前が跳躍していた時点でお前は詰んでいたという事だ。もう1つは、その氷は先ほどの『氷の地』より力を込めたため、ナイフで砕くのにも時間がより掛かるという事」
殺花が跳躍した時点で、アイティレは『氷の雨』と『氷の地』どちらも選べた。殺花が空中に止まろうとするなら、氷の雨を撃ってもいいしフェイントをかけてもいい。フェイントに引っかかり地面へと向かえば、氷の地を撃てばいい。どのみち殺花が幻影化をしない、いやもう出来ない時点で殺花は詰んでいた。即座の大ダメージか、拘束からの大ダメージかの違いしかない。
「まあ、どのみち私の勝利は確定した。後は私の最大浄化技をお前に喰らわせれば終わりだ」
ギロリと自分を睨む殺花を無視してアイティレは力を集中させた。アイティレの周囲に氷と風が渦巻く。
「我が正義、我が銃撃、我が氷、我が光よ。疾く在れ、永久の氷よ、我が銃撃に我が正義の光を乗せろ」
アイティレが動けない殺花に向けて、2つの銃を合わせる。先ほどの影人の銃撃同様のポーズだ。
アイティレの羽織った上着がはためく。周囲の気温の低下によりアイティレの吐く息が白く染まる。そして、アイティレの2つの銃口に水色と白色の光が集まり始める。
「――|永久凍撃、全開発射《ヴィエーチヌイリオート・ヴェーシビィストレル》」
「くそ・・・・・・・己はここまでか」
殺花が死を悟る中、白色と水色の光は融合していき、全てを永遠に凍らせる終撃の光を放つ引き金が引かれた。




