第284話 終撃の一撃(5)
(体術はきっとド素人だ。戦った感じそれは間違いねえ。俺は『逆境状態』で、戦いも俺の間合い内だった。だって言うのに、今はこの状況だ。訳がわからねえ・・・・・・・!)
冥の闇の性質は『闘争』。戦うという行為に特化したものだ。『逆境状態』というのは、冥が不利な条件、強敵との戦いなどをトリガーとして発動される冥の強化形態のこと。この状態に入った冥はその身体能力、力などが大幅に強化される。
地上に広がる『真場』も冥の戦いへの思いが『闘争』によって具現化した結果の1つだった。敵と戦いたい冥。だが、時と場合によりその敵は逃げの一手を選択することがある。『真場』はそんな事態を防ぐためのものだった。
戦いというものに特化した冥は、本人も戦いの達人だ。人間時代は自分の母国で拳法の修業を積み、様々な戦いの達人たちと戦ってきた。そんな冥の戦闘能力、戦闘経験値は客観的に見ても凄まじいものだ。
近距離でスプリガンと戦った冥には、実はスプリガンが体術はド素人であるということがすぐに分かった。ゆえに近距離戦ならば自分が勝つ、冥はそう確信していた。
しかし、結果は冥が予想していたものとは全く違っていた。スプリガンは冥の攻撃を捌きつつ、的確に反撃を行ってきた。それが最終的には今のこの状況に繋がっている。
(この蹴りは喰らったら終わりなやつだ。それは今までの戦いの経験から分かる・・・・・・・・・・・ああ、くそ。今回はここで終いかよ。もっともっとこいつと戦いたかったのによ・・・・・・・・だが、俺は光の浄化以外では死なねえ。闇の力を扱うお前に俺は殺せない。待ってろよ、スプリガン。次は必ず俺が――)
「――落ちろよ、地の底まで」
冥の独白が終わる前に、影人の全てを終わらせる蹴りが冥の腹部へと直撃した。
「っ~~~!!」
冥は声にならない悲鳴を上げる間もなく、骨の砕ける音を最後に聞きながら、その意識を一時的に破壊された。
『硬化』した右足を『加速』して、『破壊』の力を付与され詠唱によって蹴りを強化した一撃は凄まじい衝撃音を上げ、冥の肉体を地上へとたたき落とした。
「――では、行くぞ」
「っ・・・・・・・・・・!」
一方、もう1つの終幕も訪れようとしていた。アイティレは両手の銃を構え、凄まじい速度で殺花へと向かった。光臨したアイティレは水色のオーラを纏っていることもありその身体能力がさらに強化されている。影人の闇による身体能力の常態的強化と理屈は同じだ。ただ、影人が闇なのに対しアイティレは光の力を元にしている。
迫ってくるアイティレから殺花は距離を取るしかなかった。アイティレの1メートル以内に入れば、また体が自動的に凍り付くことになるからだ。
「逃がしはしない」
殺花が距離を取ることはアイティレにも分かっていた。ゆえにアイティレは自分以外の大地に触れているもの全てを凍らせる『氷の地』を発動させる弾丸を1発地面に撃ちながら銃撃を行った。




