第283話 終撃の一撃(4)
(嘘だろ・・・・・・・!?)
冥は凄まじい勢いで空へと上っていく。そして飛ばされている中、冥は内心驚愕していた。
(狙い通りだ・・・・・・!)
冥が空中へと投げ出されたことに影人は内心ガッツポーズを決めた。とりあえず第一段階は成功だ。
次に影人は強化されている身体能力を生かし、思いっきり跳躍した。元々のスプリガンの身体能力に、闇のよって常態的に強化された身体能力ならば、はっきり言って20メートルくらいなら垂直跳びできる。
跳躍した影人は途中で上昇している冥を抜き去った。月の輝く空にその身を躍らせた影人。この状況と、《《今から自分が行うこと》》を思えば、レイゼロールの結界を破ったときの事が嫌でも思い出される。
(あの時の戦いも地獄だったが・・・・・・・・それでも俺はなんやかんや生きてる。なら、今回も生き残ってやるさ・・・・・・・・!)
冥より上空へと躍り出た影人はその体の向きを上下逆に向けた。そして反対になった足下に闇色の板を創造する。
影人はその板を思い切り踏むと、上ってくる冥へと接近した。
(眼の強化解除。香乃宮たちと戦わせてる雑兵の召喚中止。右足だけ『加速』と『硬化』。イヴ! 今だ『破壊』を俺の右足に付与しろッ!)
影人は闇のリソースを集中させるため、眼と雑兵の召喚を止めた。そして空中で引いた影人の右足に部分的な『加速』の力と『硬化』の力を付与した。そしてあらかじめ力を練ってくれていたイヴに内心そう呼びかける。
『しゃあねえなぁ、くれてやるぜ! ミスったら殺すぞ!』
(おうよ、そんな俺なら殺してくれ。さあ、トドメの一撃決めるぜ)
「彼の者を蹴落とせ、我が蹴撃」
影人の右足に『破壊』の力が付与される。そしてダメ押しとばかりに影人は次の一撃を強化した。もちろん先ほどと同じ詠唱有りの方だ。出し惜しみはしない。
「てめえまさか・・・・・・・・・・!」
「ああ、そのまさかだ。・・・・・かなりキクだろうが、そこは知らん」
上ってくる冥が体を反転させて、下降してくる影人にその目を向けた。右足を引きながら冥の方へと向かってくる、いや落ちてくる影人を見て影人が何をしようとしているかを察したようだ。
もう残りコンマ1秒で影人の最大限の一撃が冥を襲う。空中で身動きが取れない冥にはこの一撃を避けることは不可能だ。この蹴りを確実に決めるために、影人はわざわざ冥を空中へと投げ出したのだ。
(いったい何なんだこいつは。こいつのこの強さは・・・・・・・・・・!)
体の向きを変えた冥の腹部に影人の右の蹴り落としが決まることは、もう確定事項だ。冥の闇の性質ではこの状況に対して打てる手はない。




