第276話 終幕への序曲(2)
(やらせるかよ・・・・・・・・!)
影人は冥の掴みを避けると、右手に槍のようなものを創造した。先端に杭のようなものが装着されたその槍に似た武器を影人は両手で持つ。
「はっ、この距離で長物ってのはどうかと思うぜ!?」
冥は影人が創造した武器を見て、その行為を判断ミスと捉えた。もう少し距離が離れていれば槍は充分に機能するだろうが、もうこの距離は冥の範囲内だ。そして冥の範囲内は超至近距離。畳み掛けるなら今だ。
「・・・・・・・誰が素直に使うって言った?」
「あ?」
冥は既に地に伏せるような超低姿勢から昇拳を放とうとしていた。長物は基本的には下に対する攻撃のバリエーションが少ないという理由もあるし、突然の下からの攻撃はスプリガンも対応しにくいだろうという予想もあっての事だ。
「こいつはまだ使わねえよ・・・・・・・!」
影人は槍のようなものを地面に突き刺すと、両手に拳銃を創造した。
「――滅びの光を穿て」
「っ・・・・・・!?」
バックステップをしながら2丁の拳銃の銃口を冥へと向ける影人。普通の銃弾なら冥も避ける必要はない。冥の硬化の強度は闇人の中で最も高いからだ。
(あれはさすがに喰らったらまずいな・・・・・・・!)
だが、この攻撃は避けなければまずいと冥は思った。
なぜならば、2丁の拳銃の銃口には黒い破滅の光が輝いていたからだ。
「硬さが自慢ならこれも受けられるよな・・・・・・!」
「っ、この野郎・・・・・・! 上等じゃねえか!」
影人の挑発の言葉に、見事に乗せられた冥は昇拳を放つのを中止して、右手に闇を集中させた。こうなったらスプリガンの一撃を真正面からブチ破ってやろうと冥は心に決めた。
「――黒き流星」
ここに来て完全に厨二病気分で影人は引き金を引いた。ちなみに先ほどの「滅びの光を穿て」という言葉には、闇による銃の一撃を強化する効果があったのだが、この言葉というか、技名には何の意味もない。本当にただの気分である。お忘れかもしれないが、こいつは厨二病なのである。
しかし、両の拳銃から放たれた一条の漆黒の光はまるで冗談ではない威力を持っていた。ただの人間が触れれば、間違いなくその存在ごと世界から消されるであろう。もちろん、冥ほどの硬さを誇る闇人といえどもただでは済まない。
だが、それでも冥は避けようとはしなかった。冥は自分に向かってくる黒い破滅の光に、自分の最高クラスの一撃を放った。
「――黒拳!」
限りなく伏臥に近い姿勢から、冥は闇を集中させた右手の拳で黒い光線へと殴りかかった。




