表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
274/2051

第274話 氷河統べる大提督(5)

(? なぜ自ら説明をする・・・・・・・? 見たところ嘘をついている様子もない)

 そのアイティレの説明に戸惑ったのは殺花だった。なぜわざわざ殺花に答え合わせの機会を与えたのか。提督にとって、その行為はマイナスこそあれプラスは何もないはずだ。

「ゆえに意識外からの攻撃を得意とするお前と私の相性は最悪・・・・・・・それがお前の見立てだった。そしてその見立ては正しかった。――少々、こいつらが邪魔だな」

 アイティレは再び周囲に群がってきた闇のモノたちを一瞥すると、右手の銃を天空へと掲げた。

降れよ、氷の雨(リオート・ドーシチ)

 発砲音と共に一条の弾丸が空へと昇る。すると、その弾丸は地上から20メートルほどの場所に達すると同時に、複雑な魔法陣とその姿を変えた。

 円形の魔法陣が水色の輝きを放つと、そこから尖った氷の雨が無数に地上へと降り注いだ。

「っ!?」

 殺花はその無茶苦茶な範囲攻撃に目を見開いた。冥の真場ほどは広くはないが、それでも恐るべき範囲だ。しかも光導姫の攻撃ということは、この氷の雨1つ1つが浄化の力を宿しているということだ。

「ちっ、ふざけた真似を・・・・・・・!」

 殺花はできる限りその氷の雨を避けたが、途中で無理と悟ると再び幻影化することを余儀なくされた。このような範囲攻撃では姿を消してもまるで意味がない。

 殺花が3度目の幻影化で凄まじく闇の力と体力を消耗する中、周囲の闇のモノたちは氷の雨に打たれその仮初めの命を無へと還していく。

 ちなみにだが、この雨を降らした張本人であるアイティレにこの氷の雨が当たることはない。この氷の雨はアイティレの凍域の範囲に入ると自動的に消えるようになっているからだ。

 10秒ほどだろうか。やっと氷の雨が止んだ。殺花は荒く息を吐きながら幻影化を解除した。

「ふむ、これでサッパリしただろう。――ああ、そして先ほどの説明の続きだがな、実は光臨化した私の凍域は強化されているのだ」

「はぁ・・・・はぁ・・・・・・・・強化だと?」

 いくら最上位闇人である殺花といえども、連続の幻影化は凄まじくキツいものがある。呼吸を乱した殺花は、コツコツと足音を鳴らしてこちらに距離を詰めてくるアイティレに警戒しつつ、そう聞き返した。

「――光臨化した私の凍域は、私が意識していない攻撃にも対応する。しかもその発動は常にだ。そのぶん力も普段の凍域以上に喰うが、そこは光臨化によって大幅に増加した力で補っているというわけだ。私は光臨化して強化されたこの凍域を、『絶対凍域ぜったいとういき』と呼んでいる」

「!? そんな、馬鹿げたマネが・・・・・・・・・」

 アイティレの説明に、殺花はその首を横に振った。それは例えば、殺花の幻影化が常に発動しているような状態ではないか。そんな道理に反したような事、ありえるはずが――

「貴様には残念ながら事実だ。私がわざわざ説明したのは、お前に絶望を与えるためだ。悪しき者よ、今の私にお前はもう近づくことすら出来はしない」

 殺花な言葉を否定しながら、悠然と、泰然と、『提督』は殺花へと迫る。その姿はまさに威風堂々。『提督』と呼ばれるにふさわしい姿だ。

「ああ、そういった意味では、変わらずお前と私の相性は最悪かもしれんな。お前は私に近づくことも攻撃することも出来ない。一方、私は好きにお前を攻撃できるし、何もダメージを負う心配もない。これを最悪と呼ばずして何と呼ぼう?」

「・・・・・・・・クソが」

 アイティレの挑発の言葉に怒りを覚える殺花だが、殺花は負け惜しみのようにそう言うしかなかった。

 これからの10分間という時間に、殺花は久方ぶりに死の気配が身近に迫っていることを感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ