第272話 氷河統べる大提督(3)
「・・・・・・・だが、その状態には欠点も存在するはずだ。力の全てを解放することで、戦闘能力と光の力は格段に上がるが、そのぶんタイムリミットも10分しかない。しかも10分経つと自動的に光導姫としての変身が解ける、だったか」
「ほう、見たことがなかった割にはよく知っている。確かに貴様の言うとおりだ。光臨は利点も大きいが、欠点も大きい」
そう、アイティレが今までこの状態にならなかったのは、そういった理由があったからだった。この欠点がなければアイティレも最初から光臨を使っている。だが、この欠点が存在するからアイティレは滅多にこの状態になることはない。
そして、今回は敵も1人ではない。そのような状況も相まってアイティレは中々光臨を使う決心がつかなかったのだ。
「・・・・・・・・だが、問題のないことだ。10分の間にお前を浄化して光臨を解除すればいいだけだからな」
「・・・・・・・・随分と己も舐められたものだ。言ったはずだがな、お前と己の相性は最悪だと」
「ならば試してみるがいい。その認識は変わるだろうからな」
「そこまで言うならば試してやろう・・・・・・・・・!」
殺花は少し苛立たしげにそう言うと、再びその姿を消した。
「ふん、芸の無い」
姿を消した殺花にアイティレは軽く鼻を鳴らす。殺花が姿を消している間にも、周囲にまた群がりだした闇のモノたちはアイティレにジリジリとにじり寄って来る。
「・・・・・・・・・」
だが、アイティレは銃を持った腕で腕組みをしただけだった。銃を撃つこともなくアイティレはただ立っているだけ。そうしている間にも、闇のモノたちはどんどんアイティレに近づいてくる。
そして闇のモノたちが、アイティレの半径1メートル内に足を踏み入れた瞬間――
全ての闇のモノたちは一瞬で全身が凍りついた。
(ふん、一見すれば『提督』に近づいた者は全て凍ると大抵の者は思うだろうが・・・・・・・・己は既にその現象のカラクリを見抜いている)
姿を消しながらゆっくりとアイティレに近づいていた殺花は、胸中でそんなことを思っていた。
(お前たちと戦っている間にも、己はお前の事を観察していた。貴様のその自動凍撃とでも言うべき現象を起こす為には、ある条件がある)
その条件とは『提督』の半径1メートル以内に入った者で、『提督』を攻撃しようとした者は凍るというものだ。この攻撃しようとした者というのは、そうでなければ『提督』の範囲内にいた仲間の光導姫や守護者が凍らなかった事に説明がつかないからだ。
これだけ聞けば無敵の能力に思えるかもしれないが、当然そんな都合のいい無敵の能力などはない。
(まずその自動凍撃をするには、本人が意識または認識しなければならないということ。そしてその力は己の幻影化と同じく、かなり力を消耗するのだろう。でなければ、もっとそれを使っているはずだからな・・・・・・)
この意識または認識しなければならないというのが、アイティレと殺花の相性が最悪であるという所以だ。




