第271話 氷河統べる大提督(2)
「ほいっと、おまっとさん」
「ありがとうございます剱原さん。1人で任せていて・・・・・・」
「いやいや、そんなこと気にしないで風音ちゃん! 俺もいっぱい斬れて楽しかっ・・・・・・・おっと失言だな。マジで本当に気にしないでね、こいつら雑魚だったし。それよか風音ちゃん。こっからアイティレちゃんのリミットは――」
「ええ、これから10分です。だから10分経ってアイティレが依然あの闇人と戦っていれば、私がアイティレの援護に回ります」
「「?」」
刀時と風音の会話を聞いていた陽華と明夜には、相変わらずその言葉の意味が分からなかった。
「では、ここからはみんなで固まって闇のモノたちを迎撃します。状況しだいでは、私は10分後に離脱。アイティレの援護に。――2人とも、詳しい説明が出来なくてごめんなさい。状況があまり分からないと思うけど、とりあえず今は私に従って」
陽華と明夜の方に向き直って、風音は申し訳なさそうにそう言った。2人は風音の言葉を聞いて、ただ一言こう返した。
「「わかりました!」」
「ありがとう。じゃあ――みんな、変わらずに気張って行きましょう。きっと、もう一踏ん張りよ」
「「「「了解!」」」」
風音の凜とした言葉に、他の4人はそれぞれの武器を構えた。
「? なんだこの光は・・・・・・・・・」
殺花がアイティレから立ち上がった光の柱を見て、眉根を寄せた。殺花はその役割上ほとんど表に現れることもなく、光導姫や守護者ともあまり戦ってこなかった。ゆえに、殺花はその光景を初めて見たのだ。
「――光臨を見るのは初めてか、悪しき者よ」
「っ・・・・・・・・」
光の柱が徐々に宙へと霧散していく。そして、そんな声と同時にアイティレはその姿を現わした。
光の柱にアイティレが包まれる前と現在では、現れたアイティレの格好は少しだけ異なっていた。
まず、アイティレは肩にマントのように軍服のような上着を羽織っていた。色は変わらず白を基調としていたが、ところどころ金の刺繍が入っている。
次に変わったところはと言えば、アイティレの髪の色だろうか。アイティレの髪は銀髪だが、今は少しだけ水色がかった銀髪になっている。
そして最も違うところと言えば、アイティレの纏う水色のオーラだろう。光の柱が出現する前アイティレが纏っていたオーラのようなものは、スプリガンのように常態化されていた。
「自分で言うのは少しばかり気恥ずかしいが、光臨状態の私は仲間内にこう呼ばれている――『氷河統べる大提督』とな」
「光臨・・・・・・・そうか、それが一部の光導姫にしか出来ない全ての力の解放状態か」
『光臨』という単語と少し姿が変わったアイティレを見て、殺花の様子が否応なしに変わる。『光臨』、その単語を殺花は知っていた。いつか殺花の主であるレイゼロールから聞かされていた言葉だったからだ。
光導姫の中には『光臨』といって、飛躍的に力を上げる事の出来る状態になれる者がいると。その力は、レイゼロールすら危険であると感じるほどだと。




