第270話 氷河統べる大提督(1)
「風音さん!」
「明夜ちゃん? それに陽華ちゃんに光司くんも・・・・? あれ? アイティレがフォローに入ったんじゃ・・・・・・・」
自分の名前を呼ばれて振り返った風音は、明夜たちがいることに驚いた。なぜ、彼女たちが自分の元にやって来たのか。アイティレが言っていたプランとは明らかに違う。
「アイティレさんに風音さんの所に向かえって言われまして。あと、アイティレさんから伝言を頼まれました。・・・・『アレを使う』と伝えてくれって。そう言えば風音さんは分かるって言ってました」
明夜はとりあえずアイティレから頼まれた言葉を、風音へと伝えた。明夜の言葉を聞いた風音は、「っ・・・・・・・!」と息を呑んだ。
そしてその直後、どこからか眩い光の柱が突如として出現した。
「うわっ!? な、なにあの光・・・・・・?」
「あそこって、アイティレさんがいた場所じゃ・・・・・・・・」
陽華と明夜はその光の柱の出現に驚いた。2人は初めて見た現象だったが、その現象の存在を知っていた光司と風音は、また違った反応を見せた。
「あれは『光臨』の光か・・・・・・!? さすがは『提督』だ・・・・・・・・・まさか、その域に至っていたなんて・・・・・・・・」
光司はその現象の名称を呟き、呆けたような表情を浮かべていた。光司は知識としてはそれを知っていたのだが、実際に見るのは光司も初めてだった。
「・・・・・・・・そう、使ったのねアイティレ。短期決戦に切り替えなければならないと、あなたはそう判断したのね」
そして、その光の柱を見て全てを悟ったようにそう呟いた風音は、3人に向かってある指示を飛ばした。
「・・・・・・・・・光司くん、陽華ちゃん明夜ちゃん。私達は変わらずこの闇のモノたちの相手をします。あの女性闇人の事はアイティレ1人に任せましょう」
「え、風音さん。それはいくらアイティレさんでも・・・・・・・」
「大丈夫よ陽華ちゃん。逆に、いま私たちが近づくのは危険なの。アイティレの光臨は強力すぎる。あの状態のアイティレには、もう誰も近づけない」
風音の指示に疑問を抱いた陽華の言葉に、風音はそう答える。アイティレの光臨を知っている風音はその判断が最もベストであると知っていた。
「あ、あのさっきから香乃宮くんや風音さんが言っている『光臨』って何なんですか・・・・・・・・?」
先ほどから聞き慣れない言葉を聞かされていた明夜が、ついに風音にそう質問した。明夜も陽華も、その光臨という言葉は初耳だった。
「・・・・・・・残念だけど詳しい説明は後よ。また闇のモノたちが群がってきているから。――剱原さん! アイティレが光臨しました! 私達は変わらずここで闇のモノたちの相手をします! 念のため、一応合流してください!」
「え、まじ!? アイティレちゃん光臨したの!? 分かった、なら近づいちゃダメだもんな! そっちに合流するよ!」
風音の呼びかけに、1人ひたすら闇のモノたちを斬りまくっていた刀時が、そう叫び返してきた。実はもう100体くらい闇のモノを斬っていた刀時は、まるで呼吸をするように闇のモノたちをさらに斬り倒しながら、風音たちの元へと合流してきた。




