第269話 光を臨む(6)
(・・・・・・まさか、あのような偶然によって殺しを失敗するとはな。己の運のなさが嫌になる)
まるでその事に対する怒りをぶつけるように、殺花は次々と沸いてくる闇のモノ達にナイフを振り続けていた。
(このやり方も失敗・・・・・・・・・対象たちも更に己への警戒を強くしただろう。暗殺できる確率は下がったが、次はどうやって仕掛けるか)
殺花がまた暗殺の計画を考えながらナイフを振るっていると、銃弾が突如として放たれてきた。
「ふん・・・・・・・・・」
殺花はその弾丸を全て避けると、自分に銃弾を撃って来た人物に視線を向けた。
「・・・・・・・・己の魂胆は見えていたのではなかったのか? 『提督』」
「回りくどい嫌味は結構だ。笑いたければ笑えばいい、無能だとな」
殺花の皮肉のこもった問いかけに、アイティレは冷たい声音でそう答えた。
「・・・・・・別に笑いはしない。お前が切れ者だという事は分かっていたから、己はそれを考慮した仕掛けをしただけだ」
「そうか、では感謝して私の真の力を見せてやろう。――悪しき者よ、貴様はここで完全に浄化してやる」
「っ・・・・・・・・・!?」
アイティレがそう言った瞬間、アイティレに水色のオーラが纏われた。それだけではない。いつの間にか、周囲の温度が劇的に下がって来ている。襟の下から吐いている殺花の息が白くなるほどに。
「我は光を臨む。力の全てを解放し、闇を浄化する力を」
アイティレを中心として、凄まじい光の力が渦巻く。アイティレの纏う水色のオーラもより激しく揺らめく。
そして、アイティレは一部の光導姫しか扱えない、強大な力を解放する事が出来るその言葉を呟いた。
「――光臨」
次の瞬間、
圧倒的な光が世界を照らした。




