第264話 光を臨む(1)
「ったく、キリがねえな! こいつらほとんど無限に沸いてくるし! 1体1体は雑魚なのが救いっちゃ救いだけど」
「文句を言う暇があるなら、もっと手を動かせ『侍』。無限に召喚される雑兵などいない。必ずどこかで召喚のペースが落ちるはずだ。それまで踏ん張るぞ」
「へーい・・・・・・・アイティレちゃんは手厳しいね」
目の前の闇色の甲冑の騎士を真っ二つにしつつ、刀時は小さな声でそうボヤいた。
「でも、数はまだまだ減らないわね。この乱戦じゃ、範囲攻撃は使えないし・・・・・・」
アイティレの言葉に答えるように、風音がそう呟いた。風音はいま式札全てを刀へと変えている。その2刀を以て、風音は闇から生み出されたモノたちと戦っていた。
「確かにな。お前の光線が使えれば、このような雑魚の群れは取るに足らないが、敵味方が入り乱れているこの状況ではそれも出来ない」
アイティレも無尽蔵の弾丸で、異形の化け物や骸骨兵たちを無へと還していく。だが、銃撃を掻い潜ってきた闇色の騎士がアイティレに接近し、その剣を振り上げようとした。
「――無駄だ」
しかし、その騎士の剣がアイティレに届く事はなかった。なぜなら、アイティレに攻撃しようとしたその騎士の腕は、一瞬の内に凍ってしまったからだ。そして腕だけでなく、やがてその騎士の全身までも凍ってしまった。
「ふん」
アイティレは全身が凍った騎士を、右足で蹴った。すると騎士はその衝撃でバラバラに砕け散った。
「やっぱり、あなたのそれ強すぎない? 味方の私から見てもセコいもの」
「全ての状況に対応できる力を持つお前には言われたくはないな『巫女』。嫌味にしか聞こえないぞ」
「そう聞こえたならごめんなさいね。で、どうするアイティレ。『提督』としてのあなたの考えを聞かせてくれない?」
いつの間にか、2人は背中合わせで戦う形になっていた。アイティレと風音は寄ってくる闇のモノたちを次々と屠りながら、言葉を交わす。
「そうだな・・・・・・・しばらくは、このままこの雑魚どもと戦わざるを得ないだろう。スプリガンと冥は戦いあって、こちらに干渉はしてこないはずだ。・・・・・・・・だが、気になるのは姿を消しているもう1人の闇人だな」
「そうね・・・・・スプリガンとの攻防の後から、あの女性の闇人は常に姿を消してる。何かの隙を窺ってるとしか思えないわよね」
「ああ。だから私たちはいつも以上に周囲に注意を払わされている。奴が誰を狙っているかは分からないが、私とお前、『侍』と『騎士』はまだ奴に対応出来るだろう。仮にも私たちは最上位、全員が鉄火場を潜ってきている。しかし・・・・・・・・」
「・・・・・あの2人はそうじゃない」
アイティレの言葉の続きを察した風音が、視線を一瞬だけ少し離れた所で戦っている陽華と明夜に向けた。2人も風音たちと同じように、闇のモノたちと戦っている。その近くには光司もいる。
「そうだ。あの2人には言いたい事はあるが、今は言うまい。問題は、もしあの2人が狙われたら間違いなく危険だと言うことだ。残念だが、陽華と明夜の実力はこの戦場には沿っていない。そして、戦場では弱い者から淘汰されていく」
アイティレが美しい回し蹴りを骸骨兵に放つ。骸骨兵はその強烈な蹴りによって頭蓋骨を飛ばされた。




