第261話 迫る殺しの影(3)
その疲労は現れ始めてはきているが、まだ大丈夫だ。影人はイヴとの念話による相談をそのまま続けた。
『そりゃ疲れるだろうよ。――で、このフィールドを「破壊」の力で壊せないかって話だったな。端的に言ってやるよ、無理だ。理由は垂れ流してやるから、ただ聞いとけ』
イヴは影人の提示した可能性を即座に否定すると、その理由を話した。
『このフィールドに付与されてる力、情報ってのはこいつが言ったように、「この円の範囲内にいる者は逃げるという行為が禁止、逃げようとする手段を無効」するってもんだ。軽く触れただけだが、たぶん間違っちゃいねえ』
冥の攻撃をひたすらにいなし、時に軽く反撃をするというモーションも加えながら、影人はイヴの言葉を聞く。
『そんでだ、その行為の中に「このフィールドの破壊」も含まれてるっぽいんだよ。だから「破壊」の力でこのフィールドを壊すことは出来ねえ。結局、こいつがこのフィールドを解除しない限り、やっぱこいつの意識を途切れさせるしか方法はねえな』
(・・・・・・・・了解だ。ならお前の言うとおり、こいつに『破壊』の力を叩き込むしかねえか)
『ああ、そいつが1番手っ取り早い。だが、このレベルの闇人に「破壊」の力をぶち込むのはかなり難しいぜ? 加えて最上位闇人の意識を一時的にでも断絶するレベルの「破壊」の力を練るには、多少の時間がいる。その「破壊」の力の構築は、仕方ねえから俺の方でやっといてやるよ』
(・・・・・・・・・本当、お前がいてよかったぜ)
『へっ、感謝しろよ』
(あいよ。――で、イヴ。もう一つの懸念事項の事だが・・・・・・)
『わーってるよ。ヤバイ時は俺がなんとかしてやる』
(サンキュー・・・・・・・・・なら、作戦会議は終わりだ。そろそろ、一旦眼の強化も解除しないとヤバそうだからな)
倦怠感が中々にキツくなってきたこともあり、影人は眼の強化を解除した。話せたいことは全て話せたのでここらが潮時だろう。
途端、冥の攻撃が今までの反動でとてつもなく速く感じたが、なんとか左の蹴り1発を肩にもらうだけで済んだので、帳尻合わせとしては安いものだ。
「おっ、今のはいいのが入ったな! よく分からんが、もうあんたの見切りは切れたみたいだなぁ・・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・吠えてろ」
冥の言うとおり、蹴りを受けた影人の肩の骨はヒビが入ったが、闇による回復でそのダメージは即座に修復された。まあ、蹴られた時は尋常ではなく痛かったが。
イヴによって力が構築されるまで、影人は冥との戦いに再びその意識を集中させた。




