第248話 役者、揃う(1)
陽華と明夜の突然の出現――その事態に戸惑い驚いたのは、ほとんどこの戦場にいる全員と言っていいだろう。2人を知る光司、風音、アイティレは特にその反応を顕著にし、2人のことを直接知らない刀時も戸惑いの反応を示している。闇人たちも訝しげな表情で新たな参戦者たちに視線を向けていた。
だが、2人の出現に1番驚いていたのは、この戦いを見ていた観察者たちだった。
「は・・・・・・・・・・・・? なんで、あいつらが・・・・・・」
影人はその金の瞳を限界まで見開き、
「陽華と明夜・・・・・・・・? あの2人、光導姫だったの?」
シェルディアはその口をポカンと開けた。
「え!? シェルディア様あの光導姫たちのこと知ってるんですか?」
「ええ・・・・・・・・・ちょっとした顔見知りみたいなものかしら。まさか光導姫だったとは思わなかったけど・・・・・・・」
キベリアの問いかけに、シェルディアは未だに驚愕半分といった感じで頷いた。陽華と明夜に会ったのは2回だけだが、とても気の良い少女たちだった。シェルディアが困っている時に2人は助けてくれたのだ。
「そ、そうなんですか・・・・・・・でも、この戦いに参戦して来たって事は、あの2人強いって事ですよね?」
「それは・・・・・・・どうかしら。あの2人からは、他の光導姫たちほどの実力は感じられない。さっきの浄化の光を見た限りだとね」
アイティレや風音といった人物に目を向けながら、シェルディアはそう呟いた。
シェルディアの見立ては恐らく間違っていないだろう。ここから見る限り、2人の気配も強大なものではない。光導姫の実力で言えば、良くて中の下くらいではないだろうか。
(そんな実力だというのに・・・・・・・・なぜこの戦場に来てしまったの? 今のあなた達じゃ完全に実力不足だわ。もしかしなくとも、死ぬかもしれないのに・・・・・・)
なぜかシェルディアは少し不安になった。そしてその事がシェルディア自身にとっても不思議だった。確かにあの2人には良くしてもらったが、それだけのはずだ。
(最近、私はどうかしてるのかしら。影人といい、あの2人の事といい、なぜ私はこれほど感情が動かされるの?)
確かにシェルディアは人間が好きだ。だが、それは個人に当てられるようなものではない。そもそも、本来シェルディアにとって人間というものは、そんなに個体ごとに区別されるものではないはずなのに。俗な言い方をしてしまえば、人間は自分にとっての唯一のエネルギー源である体液を持つ、食料であるはずなのに。
だが、事実としてシェルディアの感情は2人の登場によって動かされ、少し不安で心配そうな視線を陽華と明夜に向けていた。




