第247話 激化する戦い、観察者たち(5)
「っ! そこだっ!」
何が原因かは分からないが、突如として戦っていた闇人に一瞬の隙が出来た事を見抜いた光司は、女性の闇人、殺花へと急速に近づき攻撃を仕掛けた。
「待て『騎士』! 早まるな!」
殺花に隙が生じた事は、当然アイティレにも分かっていた。だが、それが何かの罠である可能性や、殺花という闇人の能力から不用意に近づく事は危険だとアイティレは感じていた。
「ちっ・・・・・」
殺花は近づいて来る光司に舌打ちをすると、まるで陽炎のようにその姿を消した。そのため、光司の剣は虚しく空を斬った。
「くそ、また・・・・・・・・・」
「ッ!? 後ろだ『騎士』」
「え?」
「――遅い」
消えた殺花が1秒後には光司の後ろへと出現し、光司の首目掛けてナイフを振るおうとしていた。今まで殺花が消えた後は、このような短いスパンでその姿を現さなかったため、光司やアイティレたちからしてみれば完全に不意打ちだった。
不意をついたつもりが、不意をつかれた。殺花の隙は罠ではなかったが、光司が殺花の間合いに不用意に近づいたために、光司は反撃を喰らう形になったのだ。
そしてその反撃は一撃必死の反撃であった。
「くっ・・・・・!?」
アイティレが殺花へと両手の銃を向けるが、恐らく間に合わないだろうという事は、アイティレが1番よく分かっていた。
反射的に振り向いた光司の喉元に凶刃が迫る。光司は直感的に理解した。守護者の肉体の反応速度を以ってしても、間に合わないだろうということに。
(俺は何をやって・・・・・・・・・・)
一瞬の思念の後に、香乃宮光司の命が尽きるかに思えた。だが、光司の命は散る事はなかった。
「「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」
なぜならば、そんな叫び声と共に浄化の光の奔流が、殺花に向かって放たれたからだ。
「!?」
その光の奔流に気がついた殺花が、自分を優先するために攻撃をやめ回避した。結果、光司の首にナイフが届く事はなかった。
「な、何で・・・・・・この光は・・・・・・・・・・」
光司が意味が分からないといった感じで、その顔を光の奔流が放たれてきた場所に向ける。今はもう収束してしまったが、光司はあの光の奔流を知っていた。光司は何度もあの光の奔流を見たことがあるからだ。
「何で、君たちがここに・・・・・・・・・・」
光司の視線の先にいたのは2人の光導姫だった。1人は、暖色系のコスチュームをまとった両腕にガントレットを装備した光導姫。そしてもう1人は、寒色系のコスチュームをまとった杖を持っている光導姫だった。
「大丈夫!? 香乃宮くん!?」
「ああ・・・・・ド派手に登場してしまったわ」
すなわち、朝宮陽華と月下明夜がそこにはいた。




