第246話 激化する戦い、観察者たち(4)
「便利なものでしょ? 今回展開してる『世界』に付与している情報は、指定された空間の現実世界からの断絶。だから私が『世界』を解除しない限り、声も現実世界には聞こえないし、私たちの姿も冥たち現実世界の住人には認識できない」
「いや、便利なんてもんじゃないですけど・・・・・・・でも、残念ながらスプリガンは現れませんね。シェルディア様がこの戦いを観察してるのは、それが目的ですよね?」
この戦場に来た目的をシェルディアはそう言っていた。それはここに来る前にシェルディアが言っていた事だ。「スプリガンに会えるかもしれない」と。
だが、スプリガンはまだ現れてはいない。このままスプリガンは現れないのではないか。キベリアはそんな事を考え始めていた。
「ふふっ、いいえキベリア。その認識は間違ってるわ。スプリガンかどうかまではわからないけど、この戦場を観察している人物は私たち以外にもいる」
しかし、シェルディアの言葉はキベリアが思ってもいないものだった。
「えっ・・・・・・?」
「あなたが分からないのも無理はないわ。何せ気配を完全に消しているもの。正直、私でも位置まではわからない。でも、いるわ」
確信を持っているかのように、シェルディアはそう断言した。
「ほ、本当ですか!? え、でもその謎の観察者が気配を完全に消しているなら、シェルディア様は何でいるってわかったんですか・・・・・・?」
キベリアはキョロキョロと断絶された世界の中から現実世界を見渡した。自分たちの正面では冥や殺花が光導姫や守護者と戦っているが、いったいその謎の観察者はどこにいるというのだろうか。
「んー、こればっかりは説明できないわね。強いて言えば、感覚能力の訴え、とでも言えばいいのかしら? 私の拡張された感覚がそう訴えているの」
「そ、それはいわゆる第六感という奴ですか?」
キベリアが若干、いやかなり引いたような感じでシェルディアにそう質問した。何というか、シェルディアという存在が規格外過ぎて、もはやキベリアは引いていた。
「そう、それよ! まあでも、これは大体どんな生物でも持っているものよ。もちろんあなたもね、キベリア。闇人になって、あなた多少は闇の気配とか力の揺らぎとか感じれるようになったでしょ? 私の場合、それが他の生物よりも広いというだけよ」
シェルディアがパンと手を叩いてそう述べた瞬間、シェルディアを含めた一部の者たちは、凄まじい闇の力の揺らぎを感じた。
「「「「「!?」」」」」
その揺らぎを感じたのはこの場では5人。すなわち、
「あ? なんだよ今のは」
冥と、
「これは・・・・・・」
殺花と、
「あら? 懐かしい力。この闇の力の気配は――」
シェルディアと、
「な、何ですかシェルディア様! 今の巨大な闇の力の気配は!?」
キベリアと、
「ッ!? 何だ、この感覚は・・・・・・・?」
スプリガンこと帰城影人。闇の力を扱う5人であった。




