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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
239/2051

第239話 表の戦い(2)

『・・・・・・はい。戦場には2人の他に「侍」という日本最強の守護者もいますが、《《もしもの場合》》がないとは限りません。現状、「巫女」の視界を共有して戦いの状況を見ていますが、現在の情勢は五分五分ごぶごぶと言ったところです。つまり、いつ状況が動くか分かりません』

 ソレイユの懸念は最もだと影人は思った。もし2人が闇人2体に負ける事、その他アクシデントが起こって『巫女』や『提督』という貴重で巨大な戦力を失う事があれば、それはソレイユ、ひいてはソレイユと同じく、レイゼロールサイドと敵対する守護者サイドからしてみても大きなマイナス要素だ。

 影人は互いの陣営の戦力差がどれほどあるのかは知らないが、ソレイユたちからすれば巫女と提督は必ず失うわけにはいかないユニットだ。まあ、それは2人と同じく戦場にいるらしい「日本最強の守護者」という人物にも言えることだが。

(・・・・・・・・・・・いかん。穿った考え方のしすぎだな)

 影人は打算に塗れた自分の思考に、少し辟易とした。あのお人好しも仮にも神だろうし、そこら辺の事はしっかりと考えているだろうが、恐らくソレイユの1番の思いと考えはそれではない。

 ただ自分の都合に巻き込んでしまった少女たちを死なせたくはない。あの女神の1番の思いと考えはそんなところだろう。

『? 影人、何が穿った考え方のしすぎなんですか?』

「別に何でもねえよ。・・・・・・ただ自分にちょっと引いただけだ」

 影人の答えにソレイユは『何ですかそれ』と意味不明な影人の言葉に呆れていた。ソレイユの反応は至極正しい。

「まあ気にするなよ、とりあえず話は了解だ。あいつらの戦いが終わり次第・・・・・・・・つーか、もう終わるな」

 眼下に映った光景は、満身創痍の虎のような闇奴に陽華と明夜が浄化の光を放ったところであった。一瞬地上に眩しい光の奔流が出現したかと思うと、次の瞬間には闇奴は浄化されていた。

「終わったな・・・・・・なら行くか。ソレイユ、闇人の方の戦場もこの近くだったよな? 場所はどの辺だ?」

『現在の位置から北西に2キロメートルほど離れた場所です。普通の人間なら徒歩20分くらいの距離ですね』

「まじで近いな・・・・・・・・・・北西2キロはあそこら辺か? ・・・・・・取り敢えず跳ぶか」

 影人は電柱の上からソレイユの言った大体の位置に視線を向けた。何だかんだ電柱の上にいて良かった。地上にいれば、その位置を視界に収める事は出来なかった。

『え、影人? 跳ぶとは・・・・・・?』

 そんな影人の言葉をソレイユは理解できていないようだった。今日は何かと問いかけが多い気がするが、それも仕方ないかと影人は思った。

 何せ今から自分がやる事は初めてやる事だからだ。

「まあ、お楽しみだな。――イヴ、契約の履行を求める。力を貸せ」

『・・・・・・・・・・・・・ちっ、面倒くせえな』

 影人がスプリガンの力の化身であるイヴにそう呼びかける。イヴの面倒臭そうな声が影人の脳内に響くと、何かが拡張したような感覚が影人を襲った。

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