第233話 予感(1)
「はあー? 俺とこいつが一緒にだと? 無理に決まってんだろ、そんな事」
「・・・・・・恐れ多くも主、主のご命令なら己1人で十分かと。このような粗野な男などいなくとも、己が主の命令を遂げてみせましょう」
レイゼロールのその切り出しに冥と殺花は、揃って拒絶の言葉を口にした。
「我もお前たちが相容れないことは理解している。だが、もしお前たちがスプリガンと出会う事があれば、その時1人では気が重いだろう。なんせ、奴は我とフェリートをたった1人で退かせている」
レイゼロールも当然2人が拒絶することは分かっていた。だが、もしもの事があれば戦力が大いにこしたことはない。そのため、レイゼロールは2人に行動を共にしてほしかったのだ。
「おい、レイゼロール。結局、そのスプリガンとお前の頼みはどう関係してんだよ。そこが明らかにならなきゃ話が見えてこねえ。お前のその言い方は、頼みを分かってるって前提の言い方だぜ」
レイゼロールの言葉に、意外にも冥が冷静な指摘をした。その言動と乱暴な態度から誤解されがちではあるが、冥は決して人の話を聞かないわけではない。ただ、冥が話を聞くのは自分の興味がある事だけではあるのだが。
「確かにそうだな。すまない、これは我のミスだ。ではお前たちに我の頼み事の内容、あわよくばの目的について聞かせる。それは――」
先ほどは冥の登場により中断された、レイゼロールの頼み事の内容が明かされる。そしてもう1つの目的についても。
「――以上が我の頼み事、もう1つの目的だ。当初は殺花にだけ任せる予定ではあったが、冥も加わることによって、目的の達成する可能性も比較的に上がる。もちろん、最上位の闇人が2人出現するという状況も、我からすれば最高のカモフラージュになる。どうだ冥? お前にとって悪い話ではないだろう? 特にあわよくばのもう1つの目的は、お前の意向に沿っているはずだ」
滔々と語る、という程ではないにしろ、レイゼロールにしては少し長めの言葉であった。何せ説明も込みであったから仕方がないだろう。レイゼロールは少しだけ疲れたように冥にそう問うた。
「・・・・・・・・・そうだな。確かに悪い話じゃねえ。お前が俺たち2人に共に行動しろって意味も分かった。お前にもメリットは当然あるし、俺にとってもうまい話だ。何せ、この陰険女と俺が同時に同じ場所に出現すりゃあ、最悪スプリガンが釣れなくても、最上位クラスの光導姫と守護者は出てくる。俺は強い奴と戦えればそれでいいしな。この陰険女はお前の頼みを受けられればそれで十分」
冥が隣の殺花を指差しながら、レイゼロールの話によるそれぞれのメリットを整理した。
「理屈では納得出来る。だが・・・・・感情では納得出来なねえな。よりによってこいつとだろ? 頭がどうにかなっちまいそうだ」
「・・・・・・・・その言葉そっくりそのままお前に返そう。己も貴様と組むなど考えられはせんのでな」
続けた冥の言葉に、それまで黙っていた殺花も不快そうに言葉を呟いた。
再び2人の間に険悪な雰囲気が流れる。レイゼロールはそんな2人をなんとか説得するべく、口を開いた。




