第232話 狂拳と殺影(5)
(スプリガン・・・・・・主に傷を負わせた不届き者)
フェリートと同じくレイゼロールを絶対の主とする殺花からしてみれば、レイゼロールに一時でも傷を負わせたスプリガンは死に値する罪人だ。
「スプリガン? 誰だそいつ?」
だが、冥からしてみればそれは今日初めて聞く名前以外の何者でもなかった。そんな冥にレイゼロールはスプリガンの分かっている限りの説明を行った。
「へえ・・・・・・・・! フェリートとあんたに匹敵する謎の怪人・・・・・・・・・・ははっ、いいじゃねえか! 滾る話だ!」
レイゼロールからスプリガンの話を聞いた冥は、心底興奮したようにその瞳を輝かせた。そんな冥の様子を見た殺花が「戦闘狂が・・・・・」と不快そうに呟くが、冥はそんな呟きなどは聞こえていないといった感じで、嬉しそうに言葉を続けた。
「おい、レイゼロール。そのスプリガンって奴とはどこで戦えるんだ? 一戦やりたいんだがよ」
「落ち着け、冥。貴様ならそう言うとは思っていたが、いま言ったように奴に関する情報は極めて少ない。ゆえに今のところ、スプリガンと出会うことは運ということになる」
「ちっ、んだよ白けるな」
「まあ、そう焦るな。確かにスプリガンと出会うのは運だが、奴が出現する状況と地域にはある偏りがある」
レイゼロールは冥にその偏りについての情報を話した。スプリガンは光導姫や闇奴が戦い合う戦場に現れること、そして出現する場所は日本で、その中でも東京によく出現することなどだ。
(っ・・・・・・・・そうか、いっそのこと冥も殺花と共に陽動に送れば・・・・・・・)
冥にスプリガンに関する偏りを話し終えたレイゼロールは、唐突にそんな事を考えた。
「へえ、なるほどな。んじゃあ、俺もちょっくら東京に行って暴れてくるぜ。おい、レイゼロール力解放してくれよ」
「貴様・・・・・・・・・」
「いい、殺花。そう憤るな。・・・・・冥、お前に1つ頼みたい事がある。なに、そう悪い話ではない。もしかしたら、スプリガンとも出会えるかもしれんぞ?」
「おう、そうかい。別に俺はそいつと戦えりゃあ何でもいいぜ。で、その頼みって何だ?」
冥が機嫌がよさそうにそう言った。冥のその言葉にレイゼロールは内心笑みを浮かべた。案の定、冥は食いついた。
「ああ。その事だが、殺花、ここからはお前にも関する話だ。よく聞いておけ」
「御意。・・・・・・しかし、主。その頼みというのは、まさか――」
殺花が何かを察したように視線をレイゼロールに向ける。そんな殺花にレイゼロールは「察しがいいな、殺花」と言葉を返した。
「冥への頼みというのは、お前と同じ頼みだ。だから、お前たち2人は行動を同じにしてもらいたい。――十闇第9の闇、『殺影』の殺花、十闇第6の闇、『狂拳』の冥よ」
レイゼロールは2人の最上位闇人に向けて、そう頼みを切り出した。




