第231話 狂拳と殺影(4)
「まず十闇の動向についてだが、フェリートにはゼノを捜しに行かせた。なぜかは分からないが、奴との経路が途切れている。そして我にも奴の気配は察知出来なくなった。ゆえにな」
「ああー・・・・・・・・・まあ、ゼノの兄貴は規格外だからな。普通は闇人とあんたとの経路は絶対に切れないが、ゼノの兄貴なら適当な理由つけて切ることも出来そうだ」
兄貴と冥がゼノの事を称した通り、冥はゼノの事を慕っている。もちろん恋愛的な意味ではない。冥はゼノの規格外の強さを尊敬しているのだ。
冥という闇人はその態度からも分かる通り、レイゼロールの事を敬ってはいない。冥が敬っているのは2人だけ。すなわちゼノとシェルディアだけだ。
「次にシェルディア、それにキベリアについてだが・・・・・・・・・シェルディアは現在は日本の東京にいる。そしてキベリアはなぜかは知らんが、シェルディアと共に生活しているらしい。何日か前、シェルディアから手紙が届いた」
レイゼロールはシェルディアの事を思い出すと、静かに息を吐いた。シェルディアからの手紙が急に虚空から届いた時は嫌な予感がした。そして手紙を開けてみると案の定レイゼロールの予感は的中した。
手紙には「キベリアをしばらく借りる」の一言しかなく、レイゼロールはまたシェルディアのわがままかと頭を抱えたものだ。
(キベリアという貴重な戦力が自在に使えないのも痛いが・・・・・・・問題は奴の「しばらく」がどれくらいかという事だな)
それともう1つレイゼロールが気になっていたのは、キベリアの戦闘に関する報告だった。まず間違いなく光導姫や守護者とは戦ったと思うが、問題は奴が現れたのかどうかだ。
(スプリガン・・・・・・・・奴はキベリアと戦ったのか? いや、もし戦ったとしてもシェルディアがまだ東京にいる事から、奴が死んでいないのは明白か。ならば・・・・・)
レイゼロールが軽い物思いに耽っている中、冥は暇そうに体を伸ばしていた。
「それで? シェルディアの姉御とキベリアの事は分かったが、それだけかよ? 他の奴らは?」
「っ・・・・・・ああ、他の者に関してはクラウンが戻って来ている。今は此処にはいないが、大方外で道化芝居でもしているのだろう。そしてそれ以外はまだ戻ってきていない」
冥の問いかけに、レイゼロールは物思いを中断した。冥に他の十闇の動向は全て話し終えた。
で、あれば次の話。即ち十闇を呼び戻した理由について冥に話すべきだろう。
「冥、我がお前たちを召集した理由は2つある。1つは目障りな2人の光導姫を消すため。だが、これに関してはまだ副次的と言っていい。問題は2つ目だ。お前がいない間、正体不明、目的不明の闇の力を扱う謎の怪人――スプリガンなる者が出現した」
「・・・・・・!」
その名を聞いて冥の横にいた殺花がピクリと体を揺らした。冥よりも早く戻って来ていた殺花はレイゼロールから、既にそのスプリガンという人物の事について聞かされていた。




