第230話 狂拳と殺影(3)
「口の利き方に気をつけろ。貴様、まだ我らが主に対する言葉遣いが直っていないようだな?」
いつの間にか、冥の後ろに移動していた殺花が静かな怒りを感じさせる口調で、冥の首元に刃を押し当てる。誰が見ても生殺与奪の権利は殺花が握っている。だがそんな状況だと言うのに、道士服の青年は小馬鹿にしたように殺花を嗤った。
「はっ、てめえのレイゼロールに対する忠犬ぶりも変わってねえな陰険女。さっさとこのチャチな光り物をどけろ。殺すぞ?」
「そうか。では、お前が死ね」
殺花がその瞳から光を消す。冥も殺気を隠さずに殺花を本気で殺すための行動を取ろうとした。まさに一触即発の空気だが、そこでレイゼロールが待ったをかけた。
「それくらいにしておけ貴様ら。・・・・・全くお前たちの仲の悪さは健在だな」
レイゼロールがため息を隠すこともなく吐いた。そう。レイゼロールが冥の姿を見て瞳を曇らせたのたこれが原因だった。
冥と殺花はその仲がすこぶる悪い。そのためこのように顔を合わせれば、必ずと言っていいほど何か問題が起こる。ゆえにレイゼロールは出来るだけ2人を出会わせたくはなかった。
(普段は世界に散らばっている2人が、よりにもよってこのタイミングで顔を合わせるとはな・・・・・・・)
タイミングが呪われているような気がするが、出会ってしまったものは仕方がない。レイゼロールの一言で殺し合いを中断した2人に(と言っても雰囲気は変わらず険悪なまま)、レイゼロールは言葉を続けこう言った。
「とにかく、貴様らのすぐ殺し合いをしようとする癖はやめろ。いくら貴様らが光の浄化以外では死なぬ闇人だからといって、お前たちが本気で戦えばここはすぐに崩壊するのだ。前にも言ったはずだぞ」
「はっ、申し訳ありません主。この男の主に対する態度があまりに無礼だったもので、つい怒りが・・・・・・・・」
「けっ、うるせえな。元はと言えばこの陰険女が絡んできたのが原因じゃねえか。俺は悪くねえよ」
レイゼロールの小言に2人はそれぞれの反応を示した。冥の言葉に殺花がギロリとした視線を向けるが、レイゼロールの言葉を受けたためか殺花は何もしなかった。
「・・・・・・冥、お前は戻って来たばかりで状況が分からないだろう。ゆえに手短に話す。お前を呼び戻した理由、他の十闇の動向についてもな。殺花、すまないがお前への頼みは冥への説明の後になる。いいな?」
「主の意向承知しました。では、私は1度闇に消えましょうか?」
「いや、いい。手短と言っただろう、話はすぐに終わる」
平伏する殺花にその場に止まるように促したレイゼロールは、面倒くさそうな表情を浮かべている冥にこれまでの出来事を話した。




