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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
225/2051

第225話 特訓の成果(3)

「ぬあ!? どうしよ明夜! 上田ゴリラ先生の怪力のせいでもう校門が閉まっちゃうよ!」

「誰がゴリラだ! 聞こえとるぞ朝宮ッ!」

「すんません! つい!」

 校門があと少しといったところで、完全に閉められる。当然ながら、あの校門が閉まれば陽華と明夜の遅刻はその瞬間に確定する。

「すべき心で、理性を乗りこなすのよ陽華! 私たちは冷静に全力で、駆ければいい!」

「分かったよ明夜!」

 2人と校門の距離はもうあと少しといったところだ。だが、校門は無慈悲に世界を閉じてゆく。

「「うおおおおおおおおッ!!」

「くっ!? 敗れるのか俺は今日も・・・・・・!」

 2人のあまりの気迫に勝雄の手が、ほんの一瞬だけ止まった。そしてその隙が勝敗を分けた。

「「行っっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」

 2人はその一瞬の隙を突いて、校門を突破した。

「くっ・・・・・・俺は、自分に負けたのか・・・・」

 2人は今日も勝利した事の喜びを分かち合うため、コツンと拳をぶつける。2人は次は教室に向かうべく、昇降口を目指した。後に残された勝雄は、ガクリと肩を落とし、悔しそうにしていた。

「はっ・・・・・・・・今日も今日とてしょうもねえな」

 言葉だけを聞くと、冷めた反応で中々辛辣な言葉だが、影人の口元はどこか緩んでいた。

 スプリガンとして影から暗躍する影人だが、この何気ない朝の光景は変わらない。

「おらー、ホームルーム始めるぞー。席につけー」

 ガラガラと音を立て、担任教師の榊原紫織が気怠そうに教室に入ってきた。生徒たちは慌てて席につき、ホームルームが始まる。

(・・・・・・・愛すべき日常の退屈が今日も始まるな)

 だがそれは素晴らしい事だ。非日常の危険さと面倒くささを知った影人は強くそう思った。










 4時間目の授業もあと5分ほどで終わりといった時間、影人は普通にノートを取りながら授業を聞いていたのだが、ある音が突如として影人の脳内に響いた。

 キイィィィィィィィィィィィィィィィィン

(・・・・・・・・・・日常が3、4時間で壊れやがった)

 聞き慣れたその音を聞きながら、影人はため息を吐いた。脳内には既に闇奴の出現位置がイメージとして浮かんでいる。ソレイユからの仕事の合図である。

(位置は・・・・・・ここから1、2キロか。この距離なら転移はないな。面倒だが行くか)

 影人は4限目の数学の教師に「体調が優れない」と断りを入れ、教室を出た。そして自分と同じく合図を受けたであろう、()()()3人と顔を合わせないように、昇降口とは反対側の階段の影に身を潜めた。

 パタパタという音が静かな廊下に響き渡る。足音は2人分。陽華と明夜だろう。そして少し遅れて1人分の足音。光司だ。

 影人はそれらの足音が完全に聞こえなくなった事を確認して、階段を降り昇降口を目指した。

『こんにちは影人。すみませんが、今回も例の如くお願いします』

「・・・・・・・・分かってるよ、そんな事は。いま昇降口に向かってるところだ」

 脳内に響くソレイユの声に影人は肉声で答えを返す。するとソレイユはこんな言葉を返してきた。

『そうですか、ありがとうございます。ふふっ、そういえば影人があの2人を見守るのは、何だかんだでちょっと久しぶりじゃないですか? ここ最近はあの2人の周囲に闇奴は現れていませんでしたし』

「まあな。つーか、俺の本来の仕事はそっちなんだがな。最近は、フェリートに提督、キベリアにイヴとかとドンパチしてたし・・・・・・・・・まあ、イヴの事に関しては自分の問題だったが」

 ソレイユの指摘に影人は頷いた。

 そう。本来の影人の仕事は陽華と明夜を影から見守ることだ。そして2人に危険が迫った場合には、スプリガンとして2人をそれとなく助けること。それがソレイユから影人に与えられた、スプリガンとしての仕事だ。

 だが、最近はカモフラージュとしてあちこちに姿を現したり、ランキング3位の光導姫と戦ったり、はたまた最上位の闇人たちと戦ったりと、他の仕事で忙しかった。ゆえに本来のスプリガンとしての仕事は存外に久しぶりというわけだ。

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