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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
220/2103

第220話 この前髪野朗にドキドキを(3)

「あ・・・・・」

 自分から握ったというのに、思わずそんな声が漏れてしまう。影人の手は見た感じだと、あまり大きくはなく、女性である自分と似ていると思っていたが、自分の友人の手は自分の手とは全く違い、硬くゴツゴツとしていた。

「っ・・・・・・何だよ暁理。だから手は繋がなくても――」

「ダメ・・・・・・・・・かな?」

 上目遣いで暁理は影人を見た。相変わらず影人の顔はその半分を前髪で覆われているため、その表情は分かりにくい。暁理にはいま影人がどのような目で自分を見ているのかが分からない。

(僕の心臓の高鳴りが、このドキドキが君に聞こえれば、君はもっと反応してくれるんだろうか?)

 影人のリアルな体温を握った手から感じながら、暁理は無意識にそんなことを思った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあー。今回だけだぞ」

 ガリガリともう片方の手で頭をかきながら、影人は暁理の手を握り返した。

「! うん・・・・・・!」

 暁理は弾けるような笑顔を浮かべた。友人の今まで見たこともないような笑顔を見た影人は、不覚にもドキリと一瞬だけ胸が高鳴った。

(っ・・・・・・何だ今のは? まさか暁理が可愛いとでも思ったのか? ははっ、ありえねえだろ。そんな思いは()()感情に繋がる。俺にはもうそんな感情は――)

「? どうしたの影人?」

 突如として黙った影人を不審に思ったのか、暁理が不思議な顔でそう聞いてきた。

「あ、ああ。・・・・・・・悪い、ちょっと考え事してただけだ。行こうぜ」

「うん! えへへ・・・・・・・・」

 雑念を振り払うように影人はそう答えると、暁理の手を引いて映画館を目指した。










「で、何みるよ? 俺としてはまだこのアニメの映画なら見たいって感じなんだが」

「そうだね、確かにこれは僕も見たいかも。でも、せっかくなら普段見ないような映画も見てみたいよね」

 3階の映画館のフロアに辿り着いた2人は、現在上映している映画の一覧を見て、そんな事を話し合っていた。現在上映している映画は、洋画に邦画、アニメにホラー、恋愛映画など様々だ。

「普段見ないような映画? 例えばなんだよ?」

「そ、そうだね。例えば・・・・・・こ、この恋愛映画とかどうかな・・・・・・・・・・?」

 暁理がどこか恥ずかしそうにある映画に指を向けた。それはいま人気の恋愛映画で、影人もよくテレビのコマーシャルで見かけたものだった。

「恋愛映画か・・・・・・・・・俺、あんまりこういった映画見たことないんだよな。登場人物の感情とか行動とかが、あんまり理解できないっていうか」

 暁理の提案に影人はあまりいい反応は示さなかった。理由はいま言った通りで、影人は今までの人生で1度も恋というものをしたことがないから、イマイチ恋愛映画の楽しさがよく分からないのだ。

「そう? 確かに僕も昔はあまり面白いとか感じなかったけど、最近は面白いと思えるようになったんだよ」

「ほう? それはまた何でだ?」

「え!? いや、それはその・・・・・・・・」

 影人のその問いかけに思わず暁理は口ごもった。理由は簡単で、いま自分にその問いかけをした人物に関連しているからだ。だが、そのことをバカ正直に言うほど暁理は素直ではなかった。

「さ、最近少女マンガにハマっててさ! それが影響で・・・・・・・」

 パタパタと両手を振って、暁理はそう言い訳をした。今日は攻めると決めた暁理ではあるが、このような不意打ちの状況にはまだ対応できないでいた。ゆえに、少々苦しい言い訳であることは暁理も認めていた。

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