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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第218話 この前髪野朗にドキドキを(1)

「んで、結局今日なんの映画見るんだよ?」 

「う〜ん、そうだなぁ・・・・・・・とりあえずは、行ってみなきゃ分からないかな。僕も今なにがやってるかは詳しく知らないし」

 電車に乗り込んだ影人と暁理は吊革を持ちながらそんな話をしていた。今日は週末ということもあってか人が多い。そのため、2人は座席に座ることが出来なかったのだ。

「はあ? お前から映画に誘っといてなんだよそれ。見たい映画がないなら別に行かなくてもいいじゃねえか。金の無駄だ」

 暁理の答えに影人はわけが分からないといった表情になる。影人はてっきり暁理が見たい映画があるからと、ついでに自分を誘ったのだと考えていたのだ。

「む・・・・・・・・だ、だって仕方ないじゃないか。デートと言えば映画が定番だし、僕も1度は影人と映画見たかったしさ・・・・・」

 ごにょごにょと口籠るように暁理は目を逸らす。よく聞こえなかった影人は「ああ?」と首を傾げた。

「と、とにかくさ! 行ってみて決めようよ! たまにはいいじゃないか! そういうのも!」

「・・・・・・・・・・わーったよ。一応、今日は付き合ってやる。だけど、映画館でチュロスと飲み物は奢れ」

「・・・・・君さ、よくこんなレディーに向かってそんなこと言えるよね。普通は逆じゃない?」

「レディー? おいおい暁理、淑女なんてどこにいるんだ? 俺の目の前にいるのは、罰ゲームで尻で花火とかいう奴だぞ? レディーのわけねえだろ」

「おっと、知らないのかい影人? ――淑女の嗜み国際条約第1条、デートをサボろうとした者はケツで花火を上げる事になる。僕のあのメールは淑女の嗜み国際条約に則ったものなんだよ」

「意味がわからん上に、平然と嘘をつくな。そんなもんがあるわけ――」

 くだらない話し合いを締め括ろうと、影人がそう言おうとした時、暁理がスマホの画面を影人に見せてきた。「じゃあ、これ見てみてよ」という暁理の言葉に、影人は前髪の下から表示されている画面に目を凝らした。そこにはこんな事が書かれていた。


     ――淑女の嗜み国際条約――


第1条 デートをサボタージュしようとした者は失格となる。罰としてサボタージュした者は尻で花火を上げなければならない。


第2条 淑女ファイトを行った際、頭部を破壊された者は失格となる。


第3条 淑女たる者、優雅たれ。優雅さを失った淑女は淑女失格となる。


エトセトラ



「・・・・・・・・・・・・・・・」

 影人は無言で暁理のスマホをスクロールさせていった。この「淑女の嗜み国際条約」とやらは膨大な数があるようで、全文を見ようとしてはそれだけで時間をかなり食いそうである。そしてスクロールが下まで行き着くと、そこには「淑女国際協会」なる協会の名前が書かれていた。

(頭沸いてんのか? この世界は・・・・・・・・・?)

「ね? ちゃんと書いてあるでしょ? これ国際条約だから僕はそれに従っただけだよ」

 頭を抱える影人に、暁理が勝ち誇ったような顔でそう言った。

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