第216話 デートは日本語で日付(3)
「それはいいのよ、影人は私を人間だと思っているから。確かにあなたの言う通り、私は気に入らない人間には言葉遣いも厳しいけど、あの子は特別。私が気に入ってる人間だから。だから、いいの」
だが、シェルディアは穏やかな笑みを浮かべただけだった。そんなシェルディアの様子を見たキベリアは少々不満そうな顔になる。
「・・・・・・・・・・・なんかシェルディア様あの人間に妙に甘くないですか? その甘さをもう少しだけ私に分けてほしいのですが」
「うるさいわよ、使用人。ほら、私たちもそろそろ行くわよ。今日は色々と買い物をするんだから」
「うう・・・・・ひどい。これでも私最上位の闇人なのに・・・・・・・・・」
いつの間にか、シェルディアの使用人にされていたキベリアは沈んだ顔で、シェルディアの後を歩いた。
「ちょ、ちょっと冒険しすぎたかな・・・・・・・・」
午後1時55分。駅前で影人を待っていた暁理はソワソワと自分の髪をいじりながらそう呟いていた。
今日の暁理の服装はデートという事もあってかなり服装に気合いが入っている。髪は昨日とっておきのシャンプーとトリートメントでサラサラにしたし、服はいつもの暁理とは違い女性的なものだ。淡いピンク色のノースリーブのカットソーに、膝より少し上程度の長さのターコイズカラーのスカート。そしてあまり物は入らない可愛らしいポシェット。
普段のボーイッシュな感じとは違い、今日の暁理は女子女子していた。
そのため家を出るときは母親や父親から変な反応をされた。母親は「遂にいい人が出来たのね・・・・・・・!」とどこか嬉しそうであったし、父親は「暁理、もし今日男の人と会うならその子を連れてきなさい。お父さん、挨拶したいから・・・・・・!」と顔に青筋を立てて笑っていた。
(全く、母さんも父さんも余計なお世話だよ。確かに、僕がこんな格好をするのなんて何年に1回だけどさ・・・・・・・・)
つい先ほどの事を思い出しながら、暁理は軽くため息をついた。両親の気持ちも分からないではない。普段は男のような格好をしている娘が急にこんな服装で遊びに行くと言ったのだ。親ならば彼氏の存在を疑うだろう。
(い、いや違う! 確かに影人とはそういう関係にはなりたいとは思ってるけど・・・・・・・・て、何を考えてるんだ僕は!?)
顔を赤くさせながら暁理はブンブンと首を横に振った。暁理とて思春期の女子高生。その心中は山より高く海より深い考えや感情で占められている。つまり早川暁理という女子はどこか素直になれない系女子であった。
そんな暁理の様子はちょっといやかなり目立っていた。元々、オシャレをした暁理がかなりの美少女という事もあり目立ってはいたのだが、その美少女が顔を赤くさせ首を横に振るという仕草に周囲の野郎共は「ヤバイ可愛すぎる」「どうする? ナンパするか?」「誰だあの超絶美少女と待ち合わせをしている奴は」「男だったら呪ってやる」とそれぞれの反応を示していた。
ちなみに暁理が時々時計を見ている事から、誰かと待ち合わせをしている事は明らかであるというのが周囲の野郎共の見解であった。
「遅いなぁ、影人・・・・・・・・」
そんな野郎共の反応などつゆ知らず、暁理はスマホを見た。現在の時刻は午後1時59分。待ち合わせの時間まで後1分しかない。だが、影人はきっと来るだろう。影人がサボれないようにメールにはちゃんと脅しの文句も入れておいた。影人もケツで花火はしたくないだろうし、必ず来るはずだ。




