第213話 イヴ・リターンキャッスル(5)
「仕組みは簡単だ。俺が闇でイヴの体を作って、イヴがその体に意志を飛ばすだけ。イヴは闇の力の意志だから、闇で作った体になら意志を飛ばせる。これがイヴが俺たちの前でも存在してる理由だ。まあ、俺が変身を解除しちまえばイヴの体は消えちまうがな」
「そういうこった女神サマ。影人が変身していない時の俺はペンデュラムの黒い宝石の中にいる。体はねえが俺の意識は存在してるから、話そうと思えばあんたと影人みたく、俺も影人と念話ができるぜ」
「まじかよ、初耳だぞそれ。という事は娘と四六時中話すことも可能ってわけか・・・・・・・・」
「また娘って言いやがったなてめえ!? ふざけんな気持ち悪いんだよ! やっぱ念話は絶対しねえ!」
「寂しいこと言うなよイヴ。俺だってたまにはクソアホ女神以外とも念話したいんだよ」
「だーれがクソアホ女神ですか!! もうキレました! 影人ぉ! そこに直りなさい! 説教です!」
「ふざけんなアホ女神! アホにアホといって何が悪い!」
ギャースカギャースカと神界に3人のふざけた怒号が飛び交う。今回の事態はこれでめでたし、と言いたいところだが、影人は1つだけソレイユに話していないことがあった。それは影人の精神世界の奥底に封じられていたあの影のことだ。
あの影の事は、いやあの影に関することは影人は自分以外の存在に言うつもりはない。それが例えソレイユであってもだ。それは影人があの影の本体と出会った後から決めていた事だ。
イヴには知られてしまったが、イヴにもあの影の事はソレイユに言わないようにと精神世界から帰る前に言っておいた。イヴは真剣な影人の様子にしぶしぶといった感じではあるが従ってくれた。だからイヴもソレイユに影の事は話していない。
(あいつに関する事は墓場まで持っていく。それが俺が決めたことだ)
ソレイユやイヴと賑やかに騒いでいる中、影人は心の中でそんなことを考えていた。
(だが、とりあえずは一件落着か・・・・・・・)
騒いでいるイヴを横目に見ながら、影人は優しい笑みを浮かべた。確かに、レイゼロールとの戦いから今日まで続いたイヴの問題は一筋縄ではいかなかったが、得られたものは非常に大きかった。
イヴとの共存、そして新たなる力。
今後の戦いにこの2つは確実に影人の助けになるはずだ。
こうしてイヴと話し合える結果になってよかったと、影人は心の底から思った。




