表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
2101/2103

第2101話 忘れられていた力1(4)

「あー、マジで意味が分からんっ。魂、魂・・・・・・魂を知覚・・・・・・っ、そうか。あの方法なら・・・・・・」

 悩んだ末に影人は1つの答えに辿り着いた。そして、影人はズボンのポケットから、スプリガンの変身媒体である黒い宝石のついたペンデュラムを取り出した。

「変身」

 影人がそう唱えると、ペンデュラムの黒い宝石が黒い輝きを放った。すると数秒後、影人の姿はスプリガンへと変化した。

「!?」

 突如として影人の姿が変わった事に、ぬいぐるみは大層驚いていた。そういえば、ぬいぐるみはスプリガンの姿を見るのは初めてだったか。影人は笑みを浮かべ、ぬいぐるみに小さく手を振った。

「なぜスプリガンに変身したのですか?」

「まあ見てろ。今に分かる」

 小さく首を傾げるイズに影人はそう言葉を返すと、自身の意識を集中させた。

「――『世界』顕現、『影闇の城』」

 詠唱は省き、影人は自身の『世界』の名を口にした。瞬間、周囲の景色が闇に飲まれた。次の瞬間、周囲の景色はどこかの城内へと変わった。テレビを見ていたぬいぐるみは、今度は世界が変わった事に「!?」と、ギョッと驚き飛び上がった。そして、トテトテと影人の方に歩いて来てガシッと影人の足にしがみついた。

「あ、ごめんな。怖がらせちまって。大丈夫だ。怖くないぞ」

 影人はしゃがむとぬいぐるみを抱き抱えた。影人の言葉を受けたぬいぐるみは「本当?」といった様子で小さく首を傾げた。影人は優しい顔で頷いた。

「ああ。そうだ。すぐに元の景色に戻るから、それまではちょっと遊んでてくれ。おい、いるんだろ。出て来てくれ」

 影人が虚空に向かってそう呼びかけると、柱の陰から3つの黒い影のようなモノが現れた。

『ニョ?』

『ニョキシ?』

『ニキ?』

 現れたのは人間の形をした不思議なモノたちだった。大きさは人間の5歳児くらいで体は真っ黒。顔に当たる部分には3つの白い穴が空いている。その穴は目と口のようであった。そのモノたち――影人の『世界』に住まう無垢な魂たちは不思議そうに首を傾げていた。

「少しの間こいつと遊んでやってくれないか? 頼むよ」

『ニョキ!』

『キシシ!』

『ニキシ!』

 影人にそう頼まれた魂たちは「いいよ!」といった様子で頷いた。影人はぬいぐるみに「ほら、こいつらが遊んでくれるってよ」と言って地面に下ろした。ぬいぐるみは「分かった!」と頷くと、魂たちに自己紹介するように軽く頭を下げた。魂たちもぺこりと頭を下げ返すと、ぬいぐるみと魂たちは鬼ごっこを始めた。

「・・・・・・なんかいいな。基本的に『世界』を展開する時はシリアスな時だけだったし・・・・・・和むぜ」

「勝手に和まないでください。しかし・・・・・・あなたの『世界』は記憶としては知っていますが、体験するのは初めてですね」

 大鎌時代の記憶としてはこの場所の事は知っている。しかし、アオンゼウの体を得て実際に影人の『世界』に来てみると、何とも言い難い雰囲気がある。無理やりそれを形容するならば、死の静謐が満ちているとでも言えばいいだろうか。

「お前やフェルフィズ、というかお前の本体か。あれはなぜか俺の『世界』を無効にする事が出来たからな。使うだけ無駄だった。というか、マジであれは未だに意味が分からん。俺の『世界』は俺が解除しない限り、どうやろうと解除されないのによ。お前本当ズルいよな」

「あなたがそれを言いますか。それは、あなたと敵対した者が間違いなくあなたに抱く意見ですよ」

 イズが影人にジトっとした目を向けてくる。影人は表情を変えずこう言った。

「理不尽には理不尽をが俺のモットーだからな。・・・・・・さて、『世界』を顕現できる時間も限られてるし、そろそろやるか」

 影人は右手で自分の胸元に触れた。すると、影人の胸に白い炎のようなものが灯った。

「っ、それは・・・・・・魂ですか?」

「ああ。『影闇の城』は全ての魂の終着点。つまり、魂が表面化され剥き出しになる場所だ。それは俺も例外じゃない。ここでなら、お前が言ってた魂で知覚するって事も出来るはずだ」

 イズの指摘を首肯した影人は、改めて4つの災厄の事、災厄が振るっていた力を意識した。すると、影人の魂が白い輝きを放った。次の瞬間、茶、赤、緑、青の4つの紋章が影人の前に展開された。

「「「「・・・・・・」」」」

 茶の紋章からは『地天』のエリレ、赤の紋章からは『火天』のシイナ、緑の紋章からは『風天』のセユス、青の紋章からは『水天』のレナカがその姿を現した。4つの災厄は閉じていた瞳を見開くと、ジッと影人を見つめて来た。

「全ての災厄を倒した者、帰城影人」

「あなたには全ての災厄の力を得る資格があります」

「汝に問います」

「あなたは力を求めますか?」

 エリレ、シイナ、セユス、レナカが言葉を分け、機械的に影人にそう問うてくる。影人はその問いかけに頷いた。

「ああ。寄越せよ。お前らの力を」

 影人が諾の返事をすると、4つの紋章と4つの災厄が重なった。すると、白い輝きが放たれ――

「・・・・・・」

 大きな白い紋章を背にした、人形のように美しいモノが現れた。燃えるように美しい白髪はボブほどの長さで、顔は中性的。災厄には肉体がなかったが、新たに現れたこの存在は一見すると肉体があるように見えた。年齢という概念はないのだろうが、見た目は15歳くらいだろうか。華奢な体に簡素な白い服と半ズボンを纏っており、そこから覗く肌は雪のように白い。そして、その存在は瞳を見開いた。その瞳の色は透明がかった白で、災厄たちと同じく複雑で美しい紋様が刻まれていた。

「・・・・・・初めましてご主人様。私は全ての災厄が集った形、名を『全天』・『零天れいてん』のナナシレと申します。以後、お見知り置きを」

 そして、目を覚ましたその存在――ナナシレは地に足を着けると、優雅に影人に向かって頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ