第2091話 兄と妹1(3)
「学校はどうだ? 適当に楽しくやれてるか?」
「・・・・・・なに急に」
「別にただの世間話、もとい兄妹トークだ。俺の可愛い妹は学校で楽しく過ごせてるかなと。お前は可愛いから兄貴としては色々不安なんだよ。女子に嫉妬されていじめられてないかとか、男子に言い寄られて迷惑してないかとか。もしそんな事があったら遠慮なく言えよ。俺がそいつを生まれてきた事を後悔するレベルでぶちのめしてやるから」
影人は至極真面目にそう言った。影人の言葉を受けた穂乃影は眉を顰めた。
「・・・・・・本当の本当に気持ち悪いし恥ずかしいんだけど。妹に可愛いとか、急に格好つけたり・・・・・・私にとって1番迷惑なのはあなたの存在」
「ねえやめて穂乃影さん。本気で気持ち悪いモノを見るような目を向けないで。お兄ちゃん、そろそろ本当に死んじゃう」
「その言い方もキモっ・・・・・・」
「がっ・・・・・・」
妹に気持ち悪がられたキモ前髪は、遂に膝から崩れ落ち、その場に両手と膝をついた。しかし、影人はすぐに立ち直ると何事もなかったように、再び穂乃影の隣に並んだ。
「で、実際はどうなんだ?」
「今の間、いる・・・・・・? 別に普通。楽しいかどうかはよく分からないけど、友達もいるし・・・・・・」
「へえ、お前友達いたんだな」
「・・・・・・殴るよ?」
「すんません・・・・・・」
穂乃影に本気で怒っている目を向けられた影人は即座に謝罪した。穂乃影は少しの間、影人を睨み続けたが、やがて影人から視線を外した。
「・・・・・・でも、今はやっぱり少し大変って感じ。来年は受験だし」
穂乃影がポツリとそう呟く。穂乃影は元々高校卒業後は就職しようと考えていた。日奈美や影人は隠しているが、穂乃影は帰城家の養子だ。これ以上迷惑をかけたくはない。出来るだけ親である日奈美の負担を減らしたいと、穂乃影はそう考えていた。
だが、日奈美は穂乃影に対し、強く進学を勧めた。どうしてもやりたい仕事があるなら別だが、そうでないなら大学に行った方が選択肢が広がる、という事だった。育ての親であり家主である日奈美の意見を無碍にはできない。結局、穂乃影は奨学金を借りて大学に行くと日奈美に言った。
しかし、日奈美はその必要はないと穂乃影に言葉を返してきた。進学費用は既に貯めてあると。穂乃影はそれは流石にと断ったのだが、結局日奈美に押し切られた。日奈美の押しの強さは帰城家随一である。今の穂乃影は、せめて受験に失敗しない事を目標としていた。
「確かに受験は面倒だよな。穂乃影はどの大学を受験するんだ。やっぱり◯◯大学か?」
「・・・・・・うん。そんなに難しくないし、学費も安めだし、交通費もほとんど掛からないし」
「そっか。まあ、この辺りの奴は大体あそこだしな。俺の知り合いもほとんどあそこ志望だ。まあ、お前ならきっと大丈夫だよ。俺と違って頭いいし」
「・・・・・・なにその他人事みたいな態度。あなたも流石に今年は3年生でしょ。もう、進路を決めなきゃならない時期。あなたは進路どうする気なの?」
穂乃影は呆れた様子で影人を見つめた。穂乃影にそう聞かれた影人は「んー、そうだな・・・・・・」と軽く悩んだ。




