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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
2081/2103

第2081話 クリスマス前髪争奪戦7(3)

「・・・・・・いま1番危険なのは間違いなく香乃宮だ。香乃宮が絶対に追って来れない場所に逃げるのが、現状は1番安全だ」

 例えば海外。影人はイギリス、アメリカ、イタリア、ロシア、中国、フランス、ギリシャを思い浮かべた。少なくとも1度行った事のある場所はそれくらいある。長距離転移を使える今の影人ならば、海外に転移する事は可能だ。先ほどは光司の追跡と転移の力の消費量を天秤にかけ、海外に逃げる選択は外したが、今の光司の危険度から考えるに、海外に逃げてもいいかもしれない。

「でもなぁ・・・・・・今のあいつなら何かよく分からない力で追って来そうなんだよな。そうなったら力の消費量が無駄になって、俺が不利になる。やっぱり、この辺りで適当に・・・・・・」

「見つけたよ、帰城くん」

 影人が真剣に悩んでいるとすぐ近くからそんな声が聞こえて来た。影人がバッと声のした方に振り向くと、そこには案の定光司がいた。

「・・・・・・おい、何でさっきの今で追いついて来てるんだよ。しかもお前・・・・・・ここ小さくはあるがビルの屋上だぞ。どうやって登ってきた?」

 影人は色々と諦めたような顔になりならがも、一応光司にそう聞いた。影人がボーリング場から逃げ出して、まだ数分しか経っていない。しかも、影人が言ったように今いる場所はボーリング場からそれなりに離れたビルの屋上だ。普通はこの短時間でここに来れるはずはないのだ。

「君の気配を感じて君の事を強く想った。すると、気がついたらここにいた。不思議だよね。でも、事実なんだ。これもまた、聖夜の奇跡の力かな」

「ちっ、やっぱりかよ・・・・・・」

 光司の答えを聞いた影人がそんな感想を漏らす。今の光司の言葉からするに、影人が海外に逃げても光司は平然と追って来るだろう。やはり、海外に転移しなくて正解だった。

「という事で帰城くん。観念して僕と今日を過ごそう。大丈夫。精一杯君を楽しませると誓うよ」

「何がという事でなんだよ・・・・・・というか、マジでそういう言葉は俺に言うな。前にも言ったと思うが、そういう言葉はお前を慕ってる誰か他の奴に言ってやれ」

 キメ顔で手を差し向けて来る光司は、いつものイケメンぶりも加わって、それはそれは格好よかった。何というか煌めいて見える。まるで物語の王子様だ。ほとんどの女性はドキドキし過ぎて卒倒するのではないだろうか。

「僕は友人の君にだから言っているんだよ。そこは勘違いをしないでほしいな」

「何を勘違いしろっていうんだ・・・・・・? 取り敢えず、お前には何を言っても無駄みたいだな」

「そうだね。今日の僕は我儘だ。恥ずかしい限りだよ」

「そう思うんなら諦めろよ。どいつもこいつも、何で俺みたいなつまらない人間とクリスマスを過ごしたがるかね。理解に苦しむぜ」

「それはみんな君の魅力を知っているからだよ。かくいう僕もその1人だ」

「はっ、寝言は寝て言えよ」

 影人は光司の言葉をバッサリ切り捨てると、トンと足場を蹴った。すると、影人はそのまま宙に浮き始めた。

「今のお前でも、流石に空は飛べないだろ。なら、俺はしばらくの間空を飛んでればいい。残念だったな香乃宮」

 影人が空中から光司を見下ろす。しかし、光司はフッと笑ってみせた。

「それはまだ分からないよ帰城くん。なにせ、今の僕は聖夜の奇跡を受けた身だからね。不可能なことも可能にしてみせるよ」

「言うじゃねえか。だったら今から俺を追いかけて来てみろよ」

 影人は空中を移動し、光司のいるビルから離れた。いくら謎の奇跡パワーを得たといっても、人間が身一つで空を飛べるはずがない。

 しかし、

「じゃあ、追いかけさせてもらうよ」

 光司はどういう理屈か、その背に半透明の翼を生じさせると、そのまま空中に羽ばたいた。光司のその姿は今日がクリスマスという事も相まって、天の使いのように見えた。

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