第208話 謎の影と答え合わせ(6)
「・・・・・・・・・やっぱそうか。お前がスプリガンの力の化身だとしたら色々と納得がいくからな。俺には出来ない、闇の力の活用方法に無詠唱。そりゃ、力そのものであるお前にならそんな事は訳のないことだし、お前がスプリガン時の俺にしか干渉して来なかった、いや出来なかった理由もそれで説明がつく」
目の前の少女の形を象った力が、普段の影人に干渉出来なかった理由は、力が抑えられている状態だったからだ。だから、力が解放されているスプリガン時の時しか化身からは干渉を受けなかった。
「・・・・・・俺という意志が発生した理由はさっき言っただろ。俺は闇の力の意志。闇の力が好み糧とする感情は、暗い感情だ。お前がレイゼロールとの戦いの時に抱いた、暗い感情から俺という意志は生まれた。・・・・・・・・・・俺はイレギュラーだ。そして、イレギュラーはいつか消える運命だ」
「は? お前が消える? それはまた何でだ?」
「何でって・・・・・・・・・・お前は俺という意志を消そうと思ってるんだろ? 俺は恐怖によって意志が屈服した。屈服させたのはお前じゃないが、精神世界で意志が屈服したと言う事実に変わりはない。だから、お前の命令に俺は逆らえない。『消えろ』と言われれば、俺は消える。それがこの世界のルールだ」
力の化身たる少女が、全てを諦めたような目で影人を見上げた。化身は影人が自分を消すと思い込んでいた。そうすれば、今まで通り影人は何の干渉も受けずに闇の力を扱える。影人にとって自分は邪魔でしかない存在だ。だから、化身は影人が自分を消すために、あの影から助けたのだと考えていた。
借りという理由は、きっと影人なりの優しさだろう。この少年の記憶などを覗いてみて、化身は帰城影人という少年が、本当のところは優しい少年であるという事を知っていた。
「はあー。んなわけねえだろ。何のために、俺がわざわざお前を助けにいったと思ってるんだ」
だが、影人の言葉は化身が想像していたものではなかった。影人のその言葉を聞いた化身は、訝しげな目を影人に向けた。
「じゃあ、何のために・・・・・・?」
「決まってる。俺とお前が共存するために必要なもの――契約を結ぶために、俺はお前を助けたんだ」
化身の奈落色の瞳を前髪の下から見つめ、影人はニヤリと笑みを浮かべた。




