第2045話 スプリガンと交流会2(2)
「典子、暗葉。ええ、久しぶりね。SNS上でやり取りはしてたけど、こうしてみんなと会えるのは素直に嬉しいわね。テンション爆上がりだわ」
「爆上がり、といった顔ではないように思いますが・・・・・・ふふっ、そうですわね」
「う、うん。私も嬉しい」
明夜の表情と言葉が一致していない事をツッコミつつ、典子は最終的に笑みを浮かべた。暗葉も典子に釣られたように口元を緩めた。
「あ、朝宮パイセンに月下パイセン! こんにちは!」
陽華、明夜、火凛、典子、暗葉が顔を合わせていると、新たに陽華と明夜を呼ぶ声が聞こえた。声を掛けてきたのは魅恋だった。魅恋の隣には海公の姿もあり、海公は「こんにちは」と陽華たちに挨拶をした。
「霧園さん、春野くん! こんにちは! 2人も参加してたんだね!」
「はい。夏休みにここで研修を受けたんですが、かなり為になったので。今回もきっといい経験になると思って参加しました」
「日本中から光導姫と守護者が集まるイベントなんて超アガるんで来ました! ここにいるの全員光導姫と守護者なんてヤバいですね!」
陽華が2人の名を呼ぶと、海公と魅恋が陽華たちの方に近づいてきた。
「何や何や。陽華と明夜の知り合いかいな」
「ええ。私たちの学校の後輩よ。今年の春くらいに光導姫と守護者になったの」
「あなた方の学校って、確か『呪術師』と『騎士』も在籍していましたわよね。しかも、去年からなぜか『芸術家』もあなた方の学校によく行っているとか・・・・・・あなた方の学校、どうなっていますの?」
「うわっ、ギャ、ギャルと物凄く可愛い・・・・・・男の子・・・・・・?」
火凛の言葉に明夜が答え、典子と暗葉はそんな反応を示した。正確に言えば、光導姫ランキング10位『呪術師』、榊原真夏は今年卒業しているため風洛高校には在籍していないのだが、真夏もロゼと同じでちょくちょく風洛高校には通っているので、典子の認識はあながち間違いでもなかった。陽華、明夜、火凛、暗葉、典子、魅恋、海公は空いている席に着くと、食事をしながら談笑した。
「向こうは賑やかだね。香乃宮くんはあっちに行かなくてよかったの?」
そんな7人を少し離れた場所から見ていた暁理は、自分の対面に座っていた光司にそう言葉をかけた。暁理と光司も光導姫と守護者だ。当然というべきか、2人もこの研修兼交流会に参加していた。
「僕が行けばいらない緊張を招く可能性が高いからね。普段から付き合いのある朝宮さんや月下さんだけならともかく、他の人々にとって僕は守護者ランキング10位、『騎士』だ。多くの人にとって肩書きは少し堅苦しい印象を与えてしまう。彼・彼女たちがそうとは限らないけど、僕はあの雰囲気を壊したくはないよ」
光司はおしぼりで手を拭きながら暁理にそう返答した。魅恋と海公に関して言えば、光司も顔見知りではある。しかし、光司は陽華と明夜ほど魅恋と海公と打ち解けられているとは思っていなかった。
「・・・・・・香乃宮くんは気遣いのしっかり出来る大人だよね。はぁ・・・・・・あの前髪とは大違いだよ」
光司の言葉を聞いた暁理は感心した様子で頷いた。そして、暁理は前髪に顔の上半分が支配されている少年を思い浮かべると、思わずため息を吐いた。
「いや、帰城くんは僕よりもずっと気遣いが出来る人だよ。真の気遣いとは、相手に気遣いと悟られる事なく気遣う事。僕の気遣いは所詮二流。帰城くんの気遣いこそ一流だよ。うん。やっぱり帰城くんは凄い」
「あいつのどこをどう見ればそんな結論になるの・・・・・・? うーん、香乃宮くんってやっぱり影人には甘いよね・・・・・・」
影人に対する称賛の言葉を述べる光司に、暁理は不思議そうに呆れたように首を傾げた。




