第2044話 スプリガンと交流会2(1)
『――皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます』
10月下旬のとある日曜日。午前10時過ぎ。扇陣高校の第3体育館。その舞台上でマイクを通してそう言ったのは、光導姫ランキング第4位にして、この扇陣高校の生徒会長でもある風音だった。体育館の中には、ざっと100から200は下らない男女がいた。いずれも若く、全員10代だった。
『本日開催するのは光導姫と守護者の研修兼交流会です。開催目的はソレイユ様やラルバ様を通して届けさせていただいた手紙にも書かれていたと思います。私たち光導姫と守護者の対象が、闇奴・闇人から異世界の流入者に変わった事に対する方法の共有、それと光導姫と守護者の仲を深め、より連携が出来る事を目的としたものです』
風音は明瞭な声で光導姫と守護者たちにそう告げた。光導姫と守護者たちは風音の言葉を静かに受け止めた。
『詳しいスケジュールは先程皆さんにお渡しした紙に書かれているかと思います。それでは、長ったらしい挨拶は抜きにして、これより光導姫と守護者の研修兼交流会を始めさせていただきます』
風音が開会を宣言すると、パチパチと体育館の中に拍手の音が響いた。
『ありがとうございます。では、まずは現在判明している異世界からの流入者の情報共有から行いたいと思います。皆さん、係の者が先導いたしますので、申し訳ありませんが、大会議室まで移動の方をお願い致します』
「はい。それでは皆さま、自分の後に続いてほしいであります」
風音の言葉を受け、芝居が手を挙げる。芝居はそのまま体育館を出た。光導姫と守護者たちも芝居の後に続いた。
午後12時過ぎ。異世界からの流入者たちの情報共有の研修――具体的には、どの種族が穏便でどの種族が狂暴かといったようなもの――を終えた光導姫と守護者たちは、扇陣高校の大食堂に来ていた。今日は日曜日だが、日本全国から集まった光導姫と守護者たちのために学食が解放されていた。しかも、扇陣高校側から食券が支給されているので、昼食代はタダだ。光導姫と守護者たちは席に着きながら、腹を膨らませていた。
「おー、陽華に明夜! 久しぶりやな! 会いたかったで!」
陽華と明夜が昼食を乗せたトレーを持って空いている席を探していると、どこからかそんな声が聞こえてきた。陽華と明夜が声のした方に顔を向けると、そこには人懐っこい笑顔を浮かべた少女――御上火凛がいた。
「火凛! 久しぶり! 元気だった?」
「元気も元気や。そういうあんさんらこそ元気やったみたいやな」
顔を明るくさせた陽華に火凛はそう答えを返す。すると――
「皆さん、ご機嫌よう」
「ひ、久しぶりみんな・・・・・・」
新たに2人の少女が現れた。1人は上品な雰囲気を纏うツインテールのいかにもお嬢様といった少女で、もう1人は癖毛のある長い髪の少し暗い見た目の少女だった。双調院典子と四条暗葉。陽華たちの知り合いだ。




