第2042話 スプリガンと交流会1(3)
「ありがとうございます。ごちそうさまでした。じゃあな、シス。お前は接客の態度が変わらず終わってるからさっさと直せよ」
影人はシスに嫌味を返し店を出ようとした。しかし、その時ちょうど店に新たにお客が入ってきた。
「――でも、まさかばったり陽華ちゃんたちに会う事になるなんてね。ふふっ、ちょっとした奇跡ね」
「はい! 私たちもまさか風音さんと『しえら』の前で会う事になるとは思ってませんでした!」
「今日がたまたま学校が終わるのが早い日でよかったわね。これは女子会をせよという天からの啓示だわ」
「・・・・・・そんな啓示があるのだろうか?」
「こういった明夜の言葉を真に受けるのは、あまりお勧めしませんよ。アイティレ・フィルガラルガ」
「うーん、僕もそこはイズちゃんに同意かな」
入店して来たのは制服を来た女子の集団だった。歳の頃から考えるに高校生だろう。女子高生の数は全部で6人。その内、2人は残りの4人とは違う制服を着ていた。
「げっ・・・・・・」
その女子高生の集団を見た影人は思わずそんな声を漏らした。控えめに言って最悪だ。ついさっきまであれだけ気分が良かったのに。影人は自分の気分が急降下するのを感じた。
「え、帰城くん!? な、何でここに!?」
「なっ、き、帰城影人・・・・・・!?」
「あ、帰城くん。こんにちは」
「あら、奇遇ね帰城くん。ん? でも、おかしいわね・・・・・・確か、2年生は今日から修学旅行だったはずだけど・・・・・・」
「っ、影人? 何で君がここに・・・・・・あ、君、まさか・・・・・・」
「帰城影人・・・・・・どうやら、あなたは修学旅行には行かなかったようですね」
影人に気がついた女子高生たち――陽華、アイティレ、風音、明夜、暁理、イズがそれぞれの反応を示す。影人はそのまま「・・・・・・よう。じゃあな」と言って店から出て行こうとしたが、ガシッと暁理に腕を掴まれた。
「おお、神よ・・・・・・」
瞬間、影人は天を仰いだ。
「え!? じゃあ帰城くん修学旅行サボっちゃったの!? 嘘でしょ!?」
女子高生の集団に捕まった影人は、なぜ修学旅行中のはずの2年生の自分が「しえら」にいるのかといった理由を話した。いや、正確には無理やり話をさせられた。影人の話を聞いた陽華は信じられないといった様子で影人にそう言った。
「嘘じゃないから俺はここにいるんだよ。俺を舐めるな」
影人がふんと鼻息を鳴らす。前髪野郎は愚かの極みを軽く超えるほどに愚かな何かなので、なぜかドヤ顔気味だった。
「いや、そこ絶対に自慢できるところじゃないから・・・・・・君は本当にいつも僕たちの予想の斜め斜め下を行くね。なんかもう軽蔑を通り越して逆に暖かい気持ちになるよ」
「修学旅行をサボる人初めて見たわ・・・・・・そういえば、帰城くん去年も修学旅行にはいなかったわよね。って事は去年もサボったのね・・・・・・」
「え、去年も・・・・・・!? あ、そうか。帰城くんって確か留年して・・・・・・凄いわね。2年連続で修学旅行をサボった人間なんて、私聞いた事ないわ・・・・・・」
「私よりもコミニュケーション能力が壊滅しているのは人間としてどうなのでしょうね」
「私も流石にどうかと思うぞ・・・・・・」
影人の言葉を聞いた暁理、明夜、風音、イズ、アイティレが引いた顔になる。当たり前だ。堂々と修学旅行をサボりドヤ顔を浮かべている前髪野郎は、控えめに言ってどうかしている。




